大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)3770 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人A弁護人山本仁の上告趣意は後記書面のとおりである。

同第一点について。

所論(イ)は、原審における検察官の冒頭陳述は、数名の被告人にかかる各別異

の事件が併合されている本件において、その提出の証拠のうち如何なる部分の証拠

をもつて被告人Aの起訴事実を立証せんとするのか不明であるから、刑訴二九六条

所定の趣旨に副わず且つ高等裁判所の判例に違反すると主張するのである。しかし

検察官の冒頭陳述は、訴訟の状況に応じ適宜すでに朗読した公訴事実を引用し又は

その冒頭陳述に代えて個々の立証趣旨を陳述するをもつて足りることは当裁判所の

判例とするところである(昭和二四年新(れ)第四八三号同二五年五月一一日第一

小法廷判決、集四巻五号七八一頁)。そして原判決の説明しているように、第一審

の第三回公判調書によると、検察官は、本件被告事件を解示して立証事項を明らか

にし、立証として被告人等の供述を内容としない書類を一応の順序に従つて取調請

求をしたのに対し、被告人及び弁護人は右の証拠調請求には異議を述べ、うち一部

の書類については証拠とすることに同意し、その証拠調の順序については然るべく

定められたいと述べていることが認められる。この経過から見れば、弁護人はこれ

らの書類の立証趣旨を了解したればこそ右のような陳述をしたと認められるのであ

つて、右公判調書の記載によつても、検察官の取調請求にかかる証拠の標目と公訴

事実とを対照するときは、その書類の立証趣旨は判明しないわけではないことは原

判決説明のとおりである。そして記録によると、その後も右の点について被告人側

からなんら異議を述べず証拠調の手続を進めている経過と合せ考えれば前掲当裁判

所の判例の趣旨に照し、第一審における検察官の冒頭陳述及び公判手続に所論のよ

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うな刑訴違反は認められず、原審の判断は正当であつて、必しも所論引用の各判例

に反するものとはいえない。また所論(ロ)は、第一審公判手続において、弁護人

が同意しなかつた証拠につき所論のような順序を経て結局裁判所が証拠調を行い事

実認定の証拠に採用した手続が違法であると非難するのであるが、帰するところ単

なる刑訴法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。なお仮り

に所論のような手続があつたとしても到底原判決に影響を及ぼすものとは認められ

ないから、刑訴四一一条を適用し、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するも

のということはできない。

同第二点について。

論旨は事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

また記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて刑訴四〇八条により、全裁判官一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

昭和二八年五月一二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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