最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)1730 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人古家幸吉の上告趣意は末尾添附別紙記載のとおりである。
論旨第一点は量刑不当の主張で上告適法の理由とならない。
同第二点に対する判断。
原判決が同判示第二の各酒税法違反の犯罪事実を認定する証拠として被告人の該
公判における自白を掲げていること及び原審第一回公判調書に論旨の指摘するよう
な記載があることは所論のとおりである。
然し、右公判調書に所論のような記載があるからといつて、被告人は同公判で犯
罪事実については何も供述しなかつたものと解すべきではなく、被告人が最初黙つ
て居るので、第一審公判調書を読み聞したところ、そのとおり相違ないと答えて、
第一審で供述した内容を肯定した意味に解すべきである(このことは、原審で、冒
頭に裁判長から被告事件について陳述することの有無を尋ねられて、公訴事実はそ
のとおり相違ないと答えていることと対照すれば一層はつきりする。)。そして、
この記載と第一審公判調書中の読聞けに係る部分とを対照して読むと、被告人は原
審公判で判示と同趣旨の供述をしたことが認められる。従つて、原判決が、被告人
の同公判における供述を自白として採証したのは正当で、同判決をもつて虚無の証
拠を採証したという論旨は当らない。
第三点に対する判断。
原判決が判示第二の(ロ)において、被告人が判示の頃三回に亙り密造したと
認定した濁酒の数量は合計一石八斗である(此の数量の認定に誤りがないことは記
録に編綴され、原判決が証拠としている差押目録の記載によつて明らかである。)。
そして、この濁酒の酒精分が、酒精計指度一〇度、計量器指度一七度、摂氏一五度
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における換算酒精分九度であつたことは、記録に編綴してある検定書によつてこれ
を窺うことが出来る。ところで、米麹五升、米一斗と水一斗五升とでは、右程度の
濁酒なら、精々三斗しか出来ないことは洵に所論のとおりであろう。しかし、原判
決の事実摘示を仔細に検討すると、「四斗樽六個に仕込み」という判示がある。若
し、毎回一仕込みしかなかつたものとすれば、米麹五升米一斗水一斗五升の割合の
仕込みなら、四斗樽三個で足り、敢えて六樽を必要としない筈である。しかるに六
樽を用いたというのであるから、六仕込みしたものと考えなければならない。そし
て六仕込みしたからこそ、一石八斗の濁酒が出来たのである(現に記録に編綴され
た告発書には、その趣旨の記載がある。)。従つて、原判決の事実摘示は、周到を
欠いた譏りを免れないとしてもその意味するところは、「……頃の三回に亙り毎回
二仕込み宛一仕込み麹五升、米一斗、水一斗五升を原料として四斗樽六個に仕込み」
云々というに在るものと見なければならない。かく見るときは必ずしも原判決の理
由に不備又は齟齬あるものとして判決を破毀しなければならない違法あるものとす
ることは出来ない。
よつて旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官 田中巳代治関与
昭和二六年一一月六日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
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