最高裁判所第三小法廷 昭和27(あ)1337 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人馬瀬文夫の上告趣意(後記)第一点について。
所論臨時物資需給調整法(昭和二一年法律第三二号以下旧法という)附則中「昭
和二十三年四月一日」を「昭和二十四年四月一日」に改めた「臨時物資需給調整法
の一部を改正する法律」(昭和二三年三月三一日法律第一六号以下新法という)は、
旧法の失効時期を延期して旧法の内容をそのまゝ新法の内容として存続せしめたも
のに外ならないのであるから、この法律が効力を発生した以後においては、旧法の
内容は新法の内容として法律上の効力を有するものと言わなければならない。され
ば仮りに新法が実際に公布された時期が昭和二三年四月九日であり右公布が法律施
行の要件であること所論のとおりであるとしても、右新法が少くも同日以後におい
ては有効に施行せられたものであること疑ないところである。従つて右新法に基い
て同日以後に制定された石油製品配給規則(昭和二四年三月三一日共同省令一号、
昭和二四年四月一日施行、論旨にいう新規則)もまた有効であること多言を要しな
い。
本件起訴にかゝる事実は、被告会社は法定の除外事由がないのに昭和二四年二月
一日頃から昭和二五年二月一七日頃迄の間一六回にわたり石油製品を所定の配給割
当公文書と引換えないで譲り受けたというのであつて、原審の是認した第一審判決
は右行為を証拠により認定した上、臨時物資需給調整法、旧新石油製品配給規則等
を適用して有罪を言渡したのであり、右行為がこれらの法規に違反し犯罪を構成す
るものとした原審の判断は正当である(臨時物資需給調整法の有効期間を延長する
法律の公布後の所為が同法により処罪されることにつき昭和二五年(れ)一七八五
号同二六年三月一日当裁判所第一小法廷判決参照)。それ故、本件行為が適法であ
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ることを前提として憲法三九条違反を主張する論旨は、その前提を欠き理由がない。
同第二点について。
論旨は被告会社に対しては当該場合において他の適法な所為に出ることを期待し
得なかつたのであるから実行の時に適法であつたのであり、被告会社に責任を帰せ
しめるのは憲法三九条に違反するというのであるが、所論の事実は事実審の認めな
かつたところであるばかりでなく、被告会社の所為が犯罪を構成するものであるこ
とは前論旨につき説明したとおりであるから、違憲の主張はその前提を欠き理由が
ない。
同第三点について。
論旨は、量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。
同第四点について。
揮発油、燈油及び重油の需給調整は、昭和二七年四月二八日政令第一一七号大赦
令施行後の同年七月一日以降廃止されたものであつて(昭和二七年三月三一日法律
第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律附則三項
参照)右大赦令の基準日においてはこれらの物資に関する需給調整はなお行われて
いたのであるから、本件行為は所論大赦により赦免されないことは前記大赦令一条
八八号によつて明白である。
同第五点について。
論旨①の理由がないことは第四点において説明したとおりであり、論旨②も臨時
物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用について
は法令の明文をもつてなおその効力を有することを規定しているのであるから理由
がない(前記昭和二七年三月三一日法律第二三号附則四項昭和二四年三月三一日共
同省令一号石油製品配給規則附則五項等参照)。なお、刑訴四一一条を適用すべき
事由も認められない。
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よつて刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和二八年一一月二四日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
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