大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和27(あ)5346 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人Cの負担とする。

理 由

被告人Aの弁護人鶴田常道の上告趣意(後記)第一点について。

記録によれば、第一審において被告人Aの私選弁護人大曲実形は、同時に共同被

告人Bの国選弁護人に選任されたけれども、Bに対する公訴事案は密出国の事案で

あり被告人Aに対する公訴事実は密出国にあたり登録証明書を返還しなかつた事実

及び密輸出を幇助した事実であつて両名間に共犯関係のないことはもちろん、その

公訴事案もそれぞれ別個独立して相互に直接のかかわりなく、たゞBは朝鮮に行く

意図を認めたが被告人Aはその意図を否認したに過ぎず、一方に利益な事実は当然

他方の不利益な事実に帰するという利害相反する場合とは認められない。さればこ

そ弁護人大曲実形がBの弁護人をも兼ねることについては、被告人Aからも弁護人

大曲実形からも終始何らの異議も述べられたことなく、弁護人大曲実形は弁論にお

いても同乗者の一名のみが朝鮮渡航の意図であつたとしても他の同乗者が同じく朝

鮮渡航の意図であつたと断定することはできない旨の意見を陳述しているのである。

これらの事実から見れば、被告人Aの私選弁護人がBの国選弁護人を兼ねたことの

ために、被告人Aの弁護権が不当に制限されたものということはできない。従つて

所論憲法三七条三項、三一条違反の主張はその前提を欠き採用し難く、原審が所論

の事実によつては原判決破棄の理由とならないと判断したことは結局において正当

である。

なお、論旨引用の高等裁判所判例のうち(一)は被告人両名が相互に暴行を加え

て傷害を与えた事案に関するもの(二)は選任されない弁護人が弁論した場合の判

例であつていずれも本件に適切でなく原判決はこれらの判例と何ら相反する判断を

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したものではない。

同第二点について。

所論中憲法三一条違反を主張する部分は、その実質において単なる刑訴法違反の

主張に帰し、その余の主張は単なる刑訴法違反の主張であつて、いずれも刑訴四〇

五条の上告理由に当らない(所論各事項についての原判示は、いずれも首肯できな

いものではなく、また判断遺脱もない)。

同第三点について。

所論は、事実誤認又は単なる刑訴法違反の主張であつて、適法な上告理由に当ら

ない。

同第四点について。

所論中には違憲の語があるけれども、その実質は判断遺脱の一主張に帰し適法な

上告理由に当らない。なお、刑訴四一一条を適用すべき事由も認められない。

被告人Cの弁護人河村範男の上告趣意(後記)第一点について。

所論は単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない(外国人登録

令は、外国人登録法附則二項によつて廃止されたが、同附則三項によつて「この法

律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお、従前の例による。」こ

とが定められているのであるから、所論刑の廃止はない)。

同第二点について。

所論は事実誤認の主張であつて、適法な上告理由に当らない。なお、刑訴四一一

条を適用すべき事由も認められない。

よつて、刑訴四〇八条、一八一条に従い、裁料官全員の一致した意見で主文のと

おり判決する。

昭和二九年三月一六日

最高裁判所第三小法廷

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裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

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