大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和27(あ)5569 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人岩村辰次郎同岩村隆弘の上告趣意は後記のとおりであつて、これに対する

当裁判所の判断は次のとおりである。

論旨は、第一審公判における証拠調のはじめに検察官は、起訴状記載の公訴事実

を立証すると述べ、個々の証拠の取調を請求し、夫々その立証趣旨を述べたのみで

あり、かゝる手続は刑訴二九六条に規定する検察官の冒頭陳述を欠くものであると

の原審弁護人の主張に対し、原審は右主張を排斥し第一審の手続を是認したのであ

るが、原審の判断は刑訴二九六条を誤解したものであり論旨掲記の名古屋高等裁判

所の判決と相反するものであるというのである。本件上告において問題とされてい

るものは、結局第一審公判の証拠調手続に関するものであるが、当時被告人又は弁

護人は右証拠調に関し何ら異議を申し立てなかつたばかりでなく、右取調前検察官

の請求に係る各書面についてこれを証拠とすることに同意するかとの裁判官の問に

対し、被告人は全部同意すると答えたこと記録上明らかである。右のような場合に

は第一審で異議を述べなかつた証拠調の違法を控訴審で主張すること自体すでに時

機に遅れたものとして許されないところである。のみならず「検察官の冒頭陳述は、

訴訟の状況に応じ適宜既に朗読した公訴事実を引用し又はその冒頭陳述に代えて個

々の立証趣旨を陳述するをもつて足りる」とすること当裁判所の判例の示すとおり

であり(昭和二四年新(れ)四八三号同二五年五月一一日第一小法廷判決)、本件

における原審の判断は、当裁判所の右判例の趣旨に従つたものと解し得られるので

あるから、もとより正当である。されば、論旨引用の名古屋高等裁判所の判例は、

前記当裁判所の判例の存する以上刑訴四〇五条三号所定の高等裁判所の判例に該当

しない。それゆえ、論旨は判例違反の主張としても理由がない。

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よつて、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決す

る。

昭和二九年三月一六日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

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