大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和27(オ)352 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人佐久間渡の上告理由は末尾添附別紙記載のとおりである。

論旨は上告人の立場のみを考え被上告人の立場を全然考えないものである。論旨

では本件の場合被上告人に所有権を主張されては迷惑至極であるという。上告人の

側からいえばそれはそうに違いないが、他方被上告人の側から見れば民法第二四二

条但書により完全に所有権を有するものであり、しかも法律には対抗要件などとい

うことについては何等の規定もないから、別に公示方法などする必要はないと思つ

て居たのである。しかるに自己の全然関与しない、上告人と訴外人との契約によつ

て所有権を奪われては迷惑至極であるというであろう。被上告人の側からいえばそ

れもそうに違いないのである。そのいずれを保護するを可とすべきかは相当むつか

しい処であり立法の決すべき問題である。そして民法は第一七七条、第一七八条等

の規定を設けたに拘わらず、第二四二条但書の場合については何等類似の規定を設

けなかつたのである。規定がなければ所有権は本来円満なものであり、何人にも対

抗し得るものである。第三者に対抗することが出来ず、従つて或る関係においては

所有者であるが他の関係においては所有者でないというが如きは全くの変態であり

それ自体不合理であるのみならず、その結果種々不合理、面倒な事態を発生せしめ

る可能性が多く法の規定なき限り猥りに創造し得べきものでない。かくの如きは十

分考慮の上法の規定を以て公示方法、効力等について明確の定めをしなければなら

ないものである。(公示方法を如何にすべきか、対抗要件とするか効力要件とする

か、保護される第三者を善意のみに限るか不動産登記の如く善意悪意を問わないこ

ととするか等々明確詳細な規定をしなければ却つて事態を紛糾せしむるであろう。

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右の如き事項を一々詳細に定めることは解釈の範囲を逸脱するものである。法律に

定めがあればそれに従つて権利者は相当の方法を講ずるであろう。法律に何等の規

定がないから別に公示方法等を取らなかつた者から判決を以て権利を取上げること

はよくない。殊に立法は公布され将来に向つてのみ効力を生ずるものであるから新

な立法をしても余り危険がないけれども、判決による解釈は民法制定当時に遡るし

特に公示されるものでないから、法律に全然ない新な法律関係が判決によつて創定

されることは甚だ危険である。)民法第二四二条但書の所有権につき何等所論の様

な制限的規定がない以上本件において係争立木については被上告人は所有者であり

訴外D合資会社は所有者でないのだから、所有者でない右会社から買受けた上告人

は所有権を取得し得ないこと当然であり、論旨は採用に由ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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