最高裁判所第三小法廷 昭和28(あ)208 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人堤牧太同松尾菊太郎の上告趣意(後記)第一点第二点について。
所論はいずれも法令違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そ
して、貸金業等の取締に関する法律二条にいう貸金業とは、反覆継続の意思をもつ
て金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介をする行為をすれば足り、必しも報酬又は利益
を得る意思若しくは現にこれを得た事実を必要としないと解することは、当裁判所
の判例とするところである(昭和二六年(あ)第二七〇二号同二八年二月三日第三
小法廷決定)。原判決の判示説明の部分にこの趣旨と異なる見解が認められるけれ
ども、その終局の判断においては右判例と一致し正当である。所論は独自の見解を
主張するに過ぎず採用することはできない。
同第三点について。
所論は法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお所論
は、被告人が無利息の貸金は貸金業等の取締に関する法律に触れるとは考えていな
かつたとして違法の認識を欠くと主張するのであるが、違法の認識が犯意の成立要
件でないことは、当裁判所のしばしば判示するところである。(昭和二四年(れ)
第二〇〇六号同二六年一月三〇日第三小法廷判決、集五巻二号三七四頁参照)
同第四点について。
所論は訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお
判決書に起訴状記載の公訴事実を引用することを認めた刑訴規則二一八条は、同二
五〇条により控訴審にも準用されるから、原判決は違法とはいえない。また刑訴規
則五七条五項の規定は判決書の謄本又は抄本に関するものであつて、原本に関する
ものでない)よつて刑訴四〇八条により裁判官小林俊三の少数意見を除き各裁判官
- 1 -
一致の意見をもつて主文のとおり判決する。
裁判官小林俊三の意見は、第一審無罪の事件の控訴審が事実の取調をしないで有
罪とするのは違法であるから、本件は職権をもつて原審に差し戻すべきものである
というのである。その意見及びこれに対する裁判官井上登の意見は、昭和二七年(
あ)第五九七号同二九年六月八日第三小法廷判決に記載したとおりである。
昭和二九年八月二四日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
- 2 -