大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28(あ)3601 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人花房節男の上告趣意第一点(一)の項について。

所論は、原審において被告人弁護人は被告人にかかる大阪簡易裁判所係属中の被

告事件の公訴事実が原審係属中の本件被告事件の公訴事実と同一と思われるので右

事件を本件に併合審理せられるよう申立てたのに原審がこの申立を却下したことは

証人申請を不能ならしめ被告人の証人審問権を不当に侵害したものであると主張し、

憲法三七条二項違反を主張するのであるが、原審第一回公判調書(記録三九三丁)

によれば、同公判期日には弁護人の控訴趣意書通りの弁論が行われた旨の記載があ

るだけで、所論のような併合審理の申立があつたことは記載していない(控訴趣意

書中にもこの点に触れたところはない)。ただ所論の大阪簡易裁判所に対する被告

人にかゝる別件窃盗被告事件の起訴状謄本が右第一回公判調書の次に記録に編綴さ

れているだけである。原審のその他の公判調書にも併合審理のことに関する記載も

なく、別に書面による申請も見当らず、原審で弁護人、被告人から証人尋問の申請

がなされた形跡なく、併合審理をすべきことの決定があつた事跡も認められない。

しかし右事件を併合せずに本件を審判したからといつても、そのことだけで本件

において証人申請をする妨げとなる筈は少しもない。本件記録によれば当事者は証

人尋問の申請をすることを制限妨害せられることなくその機会を与へられていたと

認められる。しかるに証人尋問の申請がないのであるから、証人審問の機会がなか

つたことは当然であり原審裁判所の責に帰すべき失当はない。所論違憲の主張は前

提を欠くものであつて上告適法の理由とならない。

記録を調べて見ると、所論の大阪簡易裁判所係属中の事件の公訴犯罪事実は本件

の公訴犯罪事実と同一ではなく重複するところなく(単に両犯罪事実は同種であり

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時機も殆んど同一であるというだけで)、両者はそれぞれ別個の事件である。従つ

て被告人が本件とは別に右事件において有罪の裁判を受けることがあつても本件と

同一の犯罪について二重の制裁を加えられたことにはならない。一般に別個の二つ

の事件が各別に審判された場合にも両方について刑の執行猶予を言渡すことが出来

る途も開かれている(刑法二五条二項)。しかし本件と右別件との場合において、

すでに本件だけでさえ実刑が言渡されている以上、右別件を併合しても刑の執行猶

予の言渡を受ける見込は生じて来ないと見る外ない。

本来この「二重の制裁」云々の主張は併合審理をせられるならば執行猶予の判決

が得られることを主張する理由として為されているもので、併合審理の点について

は前段説示の通りであり、この主張は他に特に上告趣意として為されているものと

は解せられない。所論はやはり上告適法の理由とならない。

同上告趣意第一点(二)の項について。

所論は量刑不当の主張に外ならないから刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。

記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべき事由はない。

よつて同法四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三〇年七月一九日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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