大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28(あ)383 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人下尾栄の上告趣意第一点について。

論旨は事実誤認を主張し、且つ、原審は予断を抱いてたやすく第一審判決を維持

し控訴棄却の裁判をしたのは公平な裁判とはいい得ないと主張するものであるが、

前段の単なる事実誤認の主張は上告適法の理由とならない。後段については原審裁

判所がどんな点についてどんな状態において予断を抱き不公平であつたかの主張が

ないが、裁判所が事実を誤認したというだけでは直ちに予断を抱いたとか不公平で

あつたとか断ずることはできない。憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁

判」とは偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつた裁判所による裁判を意味

するものであつて、個々の事件につきその内容実質が具体的に公正妥当な裁判を指

すのでなく、従つて同規定をもつて事実の認定が間違つている場合にこれを憲法上

新に上告理由となすことができると解することはできないこと当裁判所の判例とす

るところである。(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、判

例集二巻五号五一一頁参照)。記録を調べても原審裁判所の予断又は不公平があつ

たことを疑うに足る事情は認められない。結局この予断不公平の主張も事実誤認の

主張に外ならず上告適法の理由とならない。

同第二点について。

論旨においては、原判決の事実認定は原審の予断に基くこと及び経験則に反する

ことを主張するが、予断の点については第一点に説示した通りであり、経験則違背

の点については第一審判決及び挙示の証拠と原判決とを対照して考えると原判決の

証拠解釈事実認定の判断の過程に少しも経験則違背の点があることは認められない。

この論旨も事実誤認の主張に帰するのであつて、上告適法の理由とならない。

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また記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて刑訴法四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和三〇年七月一九日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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