大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28(ク)79 決定

主 文

本件各抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人等の負担とする。

理 由

特別抗告代理人牧野芳夫同藤井英男の抗告理由(後記)について。

所論一は、原決定が憲法二五条に違反すると主張するのであるが、所論の抗告人

菱健蔵について原決定の判示するところは、同人が整理基準(6)の「欠勤遅参早

退の多いもの」に該当すると認定したのであって、所論のように業務上の負傷又は

疾病に該当することを認めたものではないから労働基準法一九条の規定とはなんら

関係はない(なお別に整理規準(13)に「身体虚弱なるもの」の存することが認

められる。)そしてまた憲法二五条一項の法意は、国民一般に対して、概括的に、

健康で文化的な最低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務と

すべきであるとの趣旨であって、この規定により直接に個々の国民は、国家に対し

て具体的現実的にかかる権利を有するものでないとするのは、当裁判所大法廷の判

例とするところであるから、所論は採用することはできない。(昭和二三年(れ)

第二〇五号同二三年九月二九日判決、集二巻一号一二三五頁参照)

所論二は、原決定が憲法一四条同二一条に違反すると主張するのであるが、所論

の抗告人Aについて原決定の判示するところは、判示の所為をもつて、相手方会社

は、抗告人が整理規準(4)の「業務に対し非協力のもの」または同共準(16)

の「他人の生産意慾を阻害するもの」に該当するものとしたことを認定したのであ

って、原審が、所論のように、抗告人が細胞責任者として細胞員を指導しこれらの

者をして判示記載の行為をさせたこと自体を解雇の正当な事由と判断したものでは

ない。また原審が、疏甲第二七号の四(日本共産党規約)はなんら抗告人の右所為

につき相手方会社に対する責任をまぬかれしめるものでないと判示したのは、抗告

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人が原審における抗告理由において、責任は葛飾区委員会にあつて、細胞責任者た

る抗告人にはないという主張をしたのに対し判断をしたに過ぎない。従つて所論は、

原決定の判旨に副わない理由を前提とする主張であつて、適法な特別抗告の理由と

認められない。(なお憲法二一条の保障する自由は自己の自由意思に基く特別の公

法関係または私法関係に基く義務により制限を受けることのあり得ることは当裁判

所のすでに判示するところである(昭和二五年(ク)第一四一号同二六年四月四日

大法廷決定、民集五巻五号二一五頁参照。)

所論三は、憲法三二条同七六条三項違反を主張するが、その実質は、単に疏明方

法に対する原審の判断を非難するに過ぎないのであり、所論四は、憲法三二条違反

を主張するが、その実質は単に原審が審訊手続を行わなかつたことを非難するに過

ぎないから、いずれも適法な特別抗告の理由と認められない。

よって民訴九五条、八九条により全裁判官一致の意見で主文のとおり決定する。

昭和二九年六月一八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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