大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)1570 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人A及び同Bの弁護人今西貞夫及び同龝山定登の上告趣意第一点について。

当裁判所の判例の示すところによれば、憲法一四条は、すべての国民が人種、信

条、性別、社会的身分又は門地等の差異を理由として政治的、経済的又は社会的関

係において法律上の差別的処遇を受けないことを明らかにして、法の下に平等であ

ることを規定したものである。しかるに犯人の処罰は、かかる理由に基く差別的処

遇ではなく、特別予防及び一般予防の要請に基いて各犯罪各犯人毎に妥当な処置を

講ずるものであるから、その処遇の異なることのあるべきは当然である。事実審た

る裁判所は、犯人の性格、年齢及び境遇並に犯罪の情状及び犯罪後の情況等を審査

してその犯人に適切妥当な刑罰を量定するのであるから、犯情の或る面において他

の犯人に類似した犯人であつてもこれより重く処罰せられることのあるのは理の当

然であり、これを目して憲法一四条の規定する法の平等の原則に違反するというこ

とはできない。(昭和二三年(れ)四三五号同年一〇月六日大法廷判決)。この判

例の趣旨に照らしてみれば、本件について所論のような事情があつたとしても、こ

れを憲法一四条に違反するものと主張する論旨の理由なきこと明らかである。

また憲法三七条一項の「公平な裁判所の裁判」というのは、構成その他において

偏頗の惧れなき裁判所の裁判という意味であつて、個々の事件において法律の誤解

又は事実の誤認等により偶々被告人に不利益な裁判がなされても、それが一々同条

に触れるものではないこと、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)一七一号、同二三

年五月五日大法廷判決)の示すとおりであるから、本件について憲法三七条の違反

を主張する論旨もまた理由がない。

同第二点について。

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論旨は量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。

被告人両名の弁護人龝山定登の上告趣意第一点について。

論旨は量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人Aの弁護人塚崎直義及び同村上信金の上告趣意第一点について。

原判決は、第一、被告人両名はC候補の選挙運動者D及びEから同候補者のため

投票取纏めの選挙運動をすることを依頼され、その報酬として一括して供与される

ものであることの情を知りながら金八万円の供与を受け、後日両名協議の上選挙運

動の分担区域を定め該金員の内被告人Bにおいて金三万円を、被告人Aにおいて金

三万五千円を夫々分配取得し、第二、更にFに対しても投票取纏めの選挙運動を分

担せしめることとしてこれが報酬等として金一万五千円を同人に分与したものであ

るとの事実を認定し、第一の事実は公職選挙法二二一条一項四号に、第二の事実は

同法条一項一号に該当すると判示したのである。しかるに所論援用の判例は、数人

共謀して投票の報酬となるべき資金を受領しこれを選挙人に供与する場合において、

右共謀者間における供与資金授受の行為は、それのみでは公職選挙法違反の罪とな

らないとの趣旨を判示したものであつて、本件とは異なつた事実に関する判例であ

るから、本件にとつて適切でなく、論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は控訴趣意として主張されず従つて原審の判断を経ていない法令違反の主張

及び量刑不当の主張であつて、適法な上告理由とならない。(なお原判決の判断は

正当であつて所論のような違法はない。)

被告人Bの弁護人塚崎直義及び村上信金の上告趣意第一点及び第二点について。

論旨いずれの点も採用できないことは、前記被告人Aのために両弁護人が提出し

た上告趣意について説明したところによつて明らかである。

被告人両名の弁護人鍛治利一の上告趣意第一点について。

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論旨は控訴趣意として主張されず原審の判断を経ていない事項に関する主張であ

るから適法な上告理由とならない。のみならず所論「同月九日頃」という第一審判

決の記載は、判文全体から見て「昭和二八年四月九日頃」という意味であることが

明らかであるから、犯罪の日時を全く欠除した場合についての所論援用の判例は本

件に適切でない。

同第二点について。

論旨は事実誤認又は単なる法令違反の主張に帰し適法な上告理由とならない。

同第三点について。

論旨は控訴趣意として主張されず、従つて原審の判断を経ていない事項に関する

主張であるから適法な上告理由とならない。のみならず所論違憲の主張の理由なき

ことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)一六七号同年七月一九日大法廷判決)

に照らしてみて明らかである。また所論の各供述調書謄本は、第一審公判において、

被告人両名がいずれもこれを証拠とすることに同意しており、被告人側から異議を

申立てた形跡もないから、所論のような刑訴法の違反もない。

同第四点について。

論旨は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。

被告人両名の弁護人川本彦四郎の上告趣意第一点について。

憲法三七条一項に対する違反を主張する論旨の理由なきことは、前記今西、龝山

両弁護人の上告趣意第一点について説明したとおりである。

同第二点について。

論旨は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。

なお、記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見を以て、主文のとおり判決する。

昭和三〇年五月二四日

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最高裁判所第三小法廷

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

裁判長裁判官 井上登は退官のため署名押印することができない。

裁判官 島 保

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