大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)3010 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人木村恒の上告趣意について。

原判示中の所論「そうだとすれば」以下の判示は控訴趣旨として主張するような

事実があつた場合の仮定論であつて原審は被害者Aが自転車の使用を許容し又はす

すめたという事実を認めたものではない。原審は被告人が窃盗の犯意をもつて占有

を奪取した事実を認定したものであること判文上明らかである。それ故所論判例は

本件に適切でなく論旨は採用し難い。

被告人本人の上告趣意について。

被告人の司法警察員に対する供述調書は第一審判決が証拠として挙示していない

ところであり、検察官は勿論司法警察員が被告人を取調べるに当つて、所論の如き

拷問、強制、誘導等を行つたというが如き事跡は記録の何処にも現われていない。

却つて、被告人は第一審公判で事実は認めて争わず(第一回公判調書、記録八丁裏)、

被告人の警察及び検察庁における供述調書、被害者の被害始末書を含む総べての書

証を証拠とすることに同意したことが認められる(記録九丁、一一丁以下)。従つ

て、所論憲法第三六条第三八条違反の主張は前提たる事実を欠き採用できない。

又、憲法第三七条第二項前段が裁判所に被告人側の申請に係る証人の総べてを取

調ぶべき義務を負わしめたものでなく、また同項後段が裁判所においてその必要を

認めて尋問を許可した証人についての規定であることは、既に当裁判所昭和二三年

(れ)第八八号同年六月二三日大法廷判決(判例集二巻七号七三四頁)に判示され

ているとおりであるから、所論憲法第三七条第二項違反の主張は理由がない。その

余の論旨は刑訴法第四〇五条の上告理由に当らない。(原審認定の事実は原審挙示

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の証拠で認められる。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認めら

れない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す

る。

昭和三〇年一月一一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本村善太郎は差し支えのため署名押印することができない。

裁判長裁判官 井 上 登

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