大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)4016 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人守屋和郎の上告趣意について。

論旨は、占領期間中被占領国たる日本の主権は全面的に停止せられていた、とい

う独自の見解を前提として、本件について日本に裁判管轄権ありとした原判決は国

際法及び憲法に違反する、と主張する。しかし当裁判所の判例(昭和二九年(あ)

第二一五号同三〇年六月一日大法廷判決)によつて明らかなように、わが国は被占

領当時においても統治権を喪失したものではなく、わが刑法は当時日本国内におい

て罪を犯した者に対しては、内外人たるを問はず、その効力を及ぼしたのであつて、

ただ一時的に(昭和二一年二月一九日から同二五年一〇月三〇日までの間)連合国

最高司令官の覚書によつて連合国人に対し公訴権並びに裁判権の行使を停止せられ

ていたに過ぎないのである。すなわち右期間内といえども、連合国人に対するわが

刑法の効力は何ら害されることなく、これに対する公訴権、裁判権も単に一時的に

制限を受けたにとどまり、潜在的にはその存在を失わなかつたものと解すべきであ

る。況して昭和二五年一〇月一八日附「民事及び刑事裁判権の行使」に関する連合

国最高司令官の覚書に基く「連合国人に対する刑事事件等特別措置令」が施行され

た同年一一月一日以後においては、前記のような一時的制限も除去されていたので

ある。それ故右特別措置令施行後になされた本件の犯罪を平和条約発効後起訴した

ことには、違法はなく原判決は正当である。なお本件が所論のように占領軍裁判所

に対して起訴されたものであつたとしても、そのことはこれに対する日本の裁判権

の行使を妨げるものではない。平和条約一九条d項によつて本件のような事件に対

するわが国の刑罰権は放棄されたものであるとする所論も亦、独自の見解であつて

採ることができない。論旨はすべて理由がない。また記録を調べても刑訴四一一条

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を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和三〇年八月二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 島 保

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

裁判官 垂 水 克 己

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