最高裁判所第三小法廷 昭和29(オ)48 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人片岡政雄の上告理由第一点について。
所論は、原判決は、民法七二〇条に定める正当防衛の解釈適用を誤つた違法があ
ると主張する。しかし原判決の認定した事実関係の下においては、所論の点に関す
る原審の判断は相当であつて、違法とは認められない。すなわち判示のように被上
告人等は上告人の田に植附をしょうと「約十人位で右田に臨み、第一審原告に無断
で……右田に立入り馬を使用して……植附準備をはじめ」たことは、法所定の「他
人ノ不法行為」たる客観的要件を充足するものと解することができるが、判示事実
を通じてその「他人ノ不法行為」が急迫であり、上告人の加害行為が「已ムコトヲ
得スシテ為シタル」ものとは認めるに足りない。従つて原審の判断に所論のような
違法はなく、これと異なる前提に立つ損害賠償額に関する主張は理由がない。
同第二点について。
所論は、原判決は、不法行為に基く損害賠償の範囲について、実験則に反し、か
つ民法四一六条の解釈を誤つた違法があると主張する。しかし原判決は、適法に調
べた証拠によつて、被上告人が上告人に与えた加害の程度では、通常は脳神経衰弱
症の病状を呈することはなく、上告人の場合は異例に属すること等を認定し、結局
上告人の右病状による損害は、これを民法四一六条一項にいう通常生ずべき損害と
は認められず、同二項の「特別ノ事情ニ因リテ生シタル損害」と解すべきところ、
上告人の立証によつては、被上告人が右特別の事情を予見しまたは予見し得べかり
しことを認めるに足りないから、上告人の右損害賠償請求は失当であるという趣旨
を判断したのであつて、この判断になんら所論のような違法はない。所論は結局原
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審の事実認定を非難し、これと異なる前提に立つて原審の判断を攻撃するに帰し採
用の限りでない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 小 林 俊 三
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 本 村 善 太 郎
裁判官 垂 水 克 己
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