大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(オ)702 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人戸倉嘉市、坂本英一郎の上告理由第一点ないし第四点、第八点および

岡崎信太郎の上告理由第二点の所論について。

裁判所は法令を適用するについて当事者の主張に拘束されるものではないから、

原判決がその認定した事実につき、当事者の主張しない民法九三条により所論の売

買の効力を判定したとしてもなんら当事者主義に反するものではない。そして原判

決は、被上告人(控訴人)等先代において訴外Dに本件土地の共有持分権の売渡方

を委任し同人にその代理権を付与するに当り、右持分権は、これを上告人には売渡

さない意思であつたにかかわらず特にこの点につき右代理権を制限しなかつたが右

Dにおいて当時被上告人等先代の右意思を知つていたか少くともこれを知りうべか

りしものであつたという事実を認定しているのであるから、被上告人等先代のDに

対する右代理権の付与は、上告人を買受人とする売買契約締結に関する限度におい

ては、民法九三条によりこれを無効とすることを妨げないものというべきであり、

従つてDが被上告人等先代の代理人として本件共有持分権につき上告人との間に締

結した売買は、代理権を欠く結果被上告人等先代に対してはその効力を及ぼすべき

限りでなく、しかも原判決は、上告人も亦前記被上告人等先代の真意およびDがこ

れを知つていたことまたは知りうべかりしことにつき悪意であつたか少くともこれ

を知りうべかりしものであつた事実を認定しているのであるから、前記売買により

上告人は本件共有持分権を取得しえないものとした原判決の結論は、結局において

正当に帰し、民法九三条の解釈適用ないし心裡留保に関する所論は、爾余の判断を

するまでもなくすべて採用に値しない。

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次に上告代理人戸倉嘉市、坂本英一郎の上告理由第五点、第六点、第一〇点およ

び同崎信太郎の上告理由第三点の所論は、原判決の仮定的判断に違法があるという

に帰し、原判決の結論に影響がないものとして排斥を免れない。

その他の所論は、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関す

る法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せ

ず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとは認められ

ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 島 保

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

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