大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(オ)730 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人丁野暁春の上告理由第一点について。

所論は、上告理由書第一点(二)ないし(四)に掲げる事由に基いて、原判決が

DにおいてE親権者Fの委任により、その代理人として本件土地をGに売渡す売買

契約を締結した事実を認定したことは、採証法則に違反したものであり、審理不尽、

理由不備の違法があると主張する。しかし、原判決の挙示する証拠を総合すれば、

原判示の事情の下に、DはE親権者Fの委任により、同人の代理人として原判示の

売買契約を成立させたこと、その後売買による所有権移転登記がなされ、買主Gは

代金に相当する金額をEの名をもつて銀行へ弁済したことを認定し得られないわけ

ではないから、原判決には所論の違法はない。所論は結局、原審が口頭弁論の全趣

旨及び証拠調の結果を斟酌して自由な心証により被上告人の主張にかかる事実を真

実と判断したことを非難攻撃するに帰し、採用することができない。

同第二点について。

所論は、上告人が原審において仮定抗弁として、本件売買は親族会の同意がなか

つたので、旧民法八八七条によりこれを取消す旨の意思表示をしたと主張したのに

対し、かかる取消の意思表示のあつたことは証拠上認められないとした原判決の判

断を非難して、採証法則違反、審理不尽、理由不備の違法があると主張する。しか

し、この点に関する原審証人Hの証言、Fの供述は、原審が信用しないところであ

るから、原判示のように認定したからといつて、所論の違法は認められない。所論

も原審が適法にした証拠の取捨判断並びに事実認定を非難するに帰するので、採用

することができない。

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同第三点について。

所論は、原判決は「借受金を返済するから土地をかえしてもらいたい」という申

入がなされた事実を認定したにかかわらず、右申入に暗黙の取消権行使があつたも

のと認めなかつたことは、取消権行使の法理を誤解し、引用の判例にも違反すると

主張する。しかし、原判決の認定した申入は、所論のように相手方の所有権取得を

否認し暗黙に取消権を行使した趣旨と解しなければならないものではないので、原

判決が前記申入は、もつぱら借用金を返すから土地を返してくれという趣旨であつ

たと判断したことには、所論の違法はなく、また論旨引用の判例も所論の場合に適

切でない。

よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一

致した意見で主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

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