大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和30(あ)438 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

被告人A、同Bについて当審における未決勾留日数中各二五〇日をそれ

ぞれ本刑に算入する。

理 由

被告人Cの上告趣意について。

所論第一点の(イ)は、原判決は、被告人等の拷問による自白調書を証拠として

有罪の認定をしたのであるから憲法に違反すると主張する。しかし記録を調べてみ

ても、所論拷問の事実を認めるに足りる資料がないこと、原判決の判示するとおり

であつて、違憲の主張はその前提を欠くことに帰する。また所論同(ロ)は、本件

は、所論の官憲が所論の各人を弾圧する意図の下にスパイを挑発せしめたものであ

つて、憲法に定める思想、言論、集会、結社の自由を侵害する違憲判決であると主

張する。しかし記録上、所論のような事実関係を認めることはできないから、これ

また違憲の主張は前提を欠くことに帰し、いずれの論旨も採用のかぎりでない。

所論第二点は、採証法則違反、事実誤認を主張するに過ぎず、また第三点は、原

判決が社会正義に反すると主張し、いわれなき非難を強調するに止まり、いずれも

適法な上告理由と認められない。

被告人Aの上告趣意について。

所論は、冒頭に、原判決の憲法違反、法令違反、事実誤認を主張し、まず本件犯

行が官憲のスパイによつて誘発された悪質な事件であることを強調するが、そのよ

うな事実関係を記録上認めることができないこと、前示(被告人C趣意第一点(ロ))

のとおりである。

次に所論(一)は、前示C上告趣意第一点(イ)と同趣旨の主張であつて、単に

拷問のほかに強制を加えるに過ぎない。そしてこのような事実を認めることのでき

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ないこと前示のとおりである。所論(二)(三)(四)は、所論のいわゆる特審局

のスパイDの証言の信用性を非難するにすぎず、上告適法の理由にならない。なお

原判決は、その信用性を否定できないことについて詳細な説示をしている。所論(

五)は(一)と同趣旨に帰し、(六)は単なる訴訟法違反の主張にすぎない。また

所論について記録を調べてみると、原判示は相当であつてなんら違法はない。所論

(七)は冒頭と同趣旨である。なお所論は、結論として裁判官の態度を非難し憲法

七六条違反を主張するが、すべて独自の理由なき主張であつて、記録上なんらの根

拠なく、適法な上告理由に当らない。

被告人Bの上告趣意第一点について。

所論は、本件犯罪事実中、爆発物取締罰則違反の点について、いわゆる官憲のス

パイたるDにより挑発された被告人等を弾圧するための口実であつて、違憲の事案

であり、かつ拷問脅迫等による自白調書をもつて有罪を認定した採証法則違反、そ

の他審理不尽等の訴訟法違反及び事実誤認を主張するが、前各説示に述べたように、

所論のような事実は認められず、違憲の主張も前提を欠くことに帰し、適法な上告

理由に当らない。

同第二点について。

所論は、本件犯罪事実中、火焔びんによる現住建物放火未遂の点について、事実

誤認、Dの証言信用性の否定その他独自の見解に立つて処罰の不当を主張するにほ

かならず、適法な上告理由に当らない。(なお所論の理由のないことは他の上告趣

意について説示したとおりである)。

被告人三名の弁護人後藤昌次郎、同原田香留夫の上告趣意(両弁護人及び弁護人

小沢茂名義の上告趣意補充書を含む)について。

同第一点について。

所論は、第一審判決の証拠として挙示する被告人等の検察官に対する供述調書に

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おける供述は、強制拷問によるものであるから、これを証拠とすることは憲法三八

条に違反すると主張し、またかかる事実なしと認定した原判決の採証法則違反を主

張する。しかし記録上所論の強制拷問の事実関係を認めるに足る形跡がないことは、

被告人C上告趣意第一点に説示したとおりであり、違憲の主張は、その前提を欠く

ことに帰し、また原判決の認定非難は、単なる採証法則違反の主張であつて、いず

れも上告適法の理由に当らない

同第二点について。

所論は、第一審判決が証拠として挙示するDの証言が任意性を欠くという主張を

前提とし、憲法三八条違反を主張する。しかし所論のような事実は記録上認めるこ

とはできない。違憲の主張は前提を欠くことに帰する。

同第三点について。

所論は、本件犯罪が、官憲が共産党弾圧のためにスパイをして挑発せしめたもの

であり、かつスパイたるDの証言が官憲の教唆により偽証であり信用性がないこと

を主張する。所論は刑訴四〇五条の上告理由に当らないのみならず、所論のような

事実は、記録上認めることはできない。

同第四点について。

所論は、各被告人について原判決に憲法一四条の違反があると主張するが、原判

決が所論の理由により差別をしたという事実は全く認められないところであつて、

違憲の主張は前提を欠くに帰する。

同第五点、第六点について。

所論は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に

当らない(また記録を調べても所論のような違法は認められない)。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四〇八条、刑法二一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決

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する。

昭和三一年一月三一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 小 林 俊 三

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 本 村 善 太 郎

裁判官 垂 水 克 己

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