大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和30(あ)969 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人の上告趣意について。

所論は、原判決に事実の誤認があることを主張すると共に、公民権の停止だけは

許されたいという刑訴法上の量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条の適法な上告理

由に当らないので採用することができない。

弁護人三宅修一の上告趣意について。

所論第一は、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らな

い。なお、(十一)の調書は被告人に読み聞けられたこと記録上明らかである(三

三四丁)。また、採証法則に違背した違法も認められない。

所論第二は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らな

い。

弁護人伊部栄治の上告趣意について。

所論第一点は、原判決が有罪認定の証拠としたAに対する検察官作成昭和二八年

五月七日付供述調書が右Aの本件選挙運動資金の供与と関係のない被疑事実によつ

て逮捕勾留中に取調べて得られたものであるから憲法三四条に違背し証拠として無

効であると主張する。しかし、右供述調書が所論のような経緯で作成されたことは

記録上認められないし、弁護人の同意の下に証拠調もなされているので、所論は前

提を欠き理由がない。

同第二点は、事実誤認の主張であり、同第三点は、量刑不当の主張であつて、い

ずれも刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

弁護人内藤哲応の上告趣意について。

所論も、事実誤認、量刑不当等刑訴四〇五条の上告理由に当らない事由の主張で

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あるから適法な上告理由とならない。

記録を調べても、本件につき刑訴四一一条該当の事由を認められない。

よつて、本件上告を理由ないものとし、刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決す

る。

この判決は、裁判官小林俊三の後記少数意見を除き、その他の裁判官の一致した

意見である。

裁判官小林俊三の少数意見は次のとおりである。

本件は原料決を破棄しこれを原審に差し戻すべきものと考える。

本件のように、第一審無罪の判決に対し、検事から控訴があつた場合、控訴審が

破棄自判によつて有罪の判決を言渡すためには、控訴審自から事実の取調を行つた

後でなければこれをなすことを許されないと解すべきである。しかるに原審は、自

から事実の取調を行つた形跡なく、第一審で取り調べた証拠につき単にいわゆる書

面審理のみによつて第一審と反対の心証を形成し、有罪の判決を言渡したのである。

このような手続は、控訴審ではあるがはじめて有罪の判決を言渡すことに帰着する

審判として違法たるを免れないのであつて、原審は自から事実の取調をしなければ

ならないのである。従つて本件は職権をもつて、破棄差戻の判決をするのを相当と

する。その理由の詳細は、昭和二七年(あ)第五九七号同二九年六月八日第三小法

廷判決において述べたとおりであるからこれを引用する。(判例集八巻六号八二一

頁参照)。

昭和三〇年七月五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

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裁判官 本 村 善 太 郎

裁判官 垂 水 克 己

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