最高裁判所第三小法廷 昭和30(オ)661 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人中村荘太郎の上告理由第一点について。
所論は、原判決が、本件疎開命令の告知の効力を是認したのは違法であるという
に帰する。しかし原審が、その挙示する証拠により適法に認定した事実によれば、
当時東京都におけるいわゆる第六次強制疎開は、非常緊急の状態下において、きわ
めて大規模な事業を速急に実施しなければならないものであつたから、平常時のよ
うにいちいち税務署の保管に属していた家屋台帳を調査する余裕はとうていなかつ
たことがうかがわれ、本件疎開命令についてとられた判示のような方法以外に別途
の告知方法を講ずることは実際不可能のことに属していたことを肯認するに十分で
ある。したがつて、原審が、このような状況の下においては、判示のような措置に
よつて、D本店は、疎開命令を了知し得べき客観的状態におかれたと認めるのが相
当であるとし、本件疎開命令の告知の効力を認めたのは正当であつて、所論は採用
することはできない。
同第二点について。
所論は、原判決が憲法九七条に違反すると主張するが、その理由とするところは、
結局本件疎開命令の効力を是認した原判決の判断を非難する第一点の所論に帰する
のであつて、採用のかぎりでない。
同第三点について。
所論は、上告人がなお本件借地権を失わないとし、その理由として、いわゆる第
六次疎開命令は借地権の補償をしていないと主張するのであつて、原審と異なる独
自の見解を強調するにすぎない。そして原審は、第六次疎開命令において、命令が
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告知によつて効力を生じたときは、東京都は、疎開建物の所有権およびその敷地上
の借地権を収用によつて取得するものと判断したのであつて、原審が適法に確定し
た事実関係によれば、かかる判断を誤りとはいえない。所論は採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 小 林 俊 三
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
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