大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和30(オ)923 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人梅山実明の上告理由第一点について。

記録によると、原審における上告人の主張は、譲受にかゝる土地賃借権をもつて

被上告人に対抗し得ること並に右賃借権が一時使用の為のものでないことに集中さ

れかつそれをもつて終始している。したがつて右の経緯に照らすと、本件係争宅地

が被上告人の所有にかゝるものであるとの被上告人の第一審における主張に対する

上告人の自白並に原審における上告人本人尋問の結果中の同趣旨の供述を口頭弁論

の全趣旨として併せ考えても、結局、原審が本件宅地八二坪は被上告人の母Dの所

有に属し被上告人がこれをDから無償で借受けている事実を上告人において明らか

に争わないと判断したのはもとより正当である。而してこの場合原審において右の

主張につき上告人に対して答弁を促す等釈明権を行使しなくても、これを違法視す

るを得ないこと勿論である。所論援用の判例は本件に適切でなく、論旨は理由がな

い。

同第二点について。

所論の事実主張については、原審は擬制自白ありたるものと判断したのであるか

ら、この点について証拠による認定をなすを要しないことはいうまでもない。論旨

は理由がない。

同第三点について。

原判決(並に引用の第一審判決)において適法に確定した事実によれば、上告人

において本件宅地上の建物の譲受に伴つて承継した土地賃借権をもつて、借地法九

条にいわゆる一時使用の為のものであるとした原審の判断は十分首肯することがで

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きる。而して右の判断は、甲第一号証によつて認められる契約条項並に本件宅地上

の建物の規模構造等を考慮に入れても、なお左右されるものではない。原審の判示

するところも右の趣旨に出たものであることは疑なく、原判文並に引用の第一審判

決の判文に徴し、所論は帰するところ右判文を正解しないで、違憲に名を藉り原審

の前示判断を攻撃するに過ぎない。

同第四点について。

本件の土地八二坪が被上告人の母Dの所有であり、被上告人が昭和二二年以来そ

の全部をDから無償で借受けていること、上告人主張の土地賃借権が昭和二七年五

月三一日限り賃貸借契約の終了により消滅したことは原審が適法に確定した事実で

ある。したがつて、被上告人はDに対し右八二坪の土地の使用収益をさせるべきこ

とを請求する権利を有するのであり、右Dにおいて前記賃借権の消滅に伴い上告人

に対して有する所有権に基く本件係争宅地の明渡請求権を行使しないのであるから、

被上告人が自己の使用収益請求権を保全するため所有者たるDに代位して右明渡請

求権を行使し得ることは明らかである。この場合、Dにおいて何故に右明渡請求権

を行使しないかはもとより問うところではなく、更に、該請求権の行使は、Dにと

つては自己に帰属する権利の行使であり、被上告人にとつては自己の使用収益権の

保全に役立つことになるわけであるから、右代位権の行使が右両者の間で民法八二

六条にいう「利益が相反する行為」にあたらないことはいうを俟たない。所論は、

債権者代位権についての独自の見解に基くもので採用の限りでない。

同補充上告理由第一点について。

論旨前段に対する判断は前記第一点について述べたとおりである。

論旨後段の主張は、上告人が原審において主張しなかつたところである。のみな

らず被上告人が有効に本件宅地を借受けたとの原審の認定に違法の点は認められな

い。所論は結局原審の認定にそわない事実ならびに独自の法解釈を前提として原審

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の事実認定を非難するに帰し、採るを得ない。

同補充上告理由第二点について。

原審確定の事実により本件賃貸借が一時使用の為のものであるとした原審の判断

の正当であることは前記第三点について述べたとおりである。その他、所論は結局

原審の認定しない事実を前提とし、あるいは借地法に関する独自の法解釈に基いて

原審の右の判断を攻撃するにすぎないから採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 島 保

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 垂 水 克 巳

裁判官 高 橋 潔

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