大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和31(あ)2899 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人Aの弁護人林武雄、被告人Bの弁護人林武雄の各上告趣意は、いずれも事

実誤認、量刑不当の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当ら

ない。

被告人Cの弁護人長野法夫の上告趣意は、違憲をいうが、その実質は事実誤認、

単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない(なお、

原判決挙示の証拠によると、被告人Dは、判示日時、判示a区b町c丁目d番地の

自宅でE某に依頼して本件麻薬をFより購入せしめ、これを同人から右自宅におい

て受け取つたことが窺われるのであるから、かかる場合に被告人が本件麻薬を前記

自宅において所持したものと認定した原判示には、所論のような違法は存しない。)。

被告人Gの弁護人伊藤静男の上告趣意について。

原判決の是認した第一審判決の確定した事実によると、被告人Hは、相被告人三

名の外二名と共謀の上、IことJに対し「お前は麻薬を偽物とすり替えたのがばれ

て八万円を支払う旨の借用書を書いているが、まだ払つていないから払え」と要求

し、同人がこれを拒むや数回にわたり同人の顔面、頸部などを手拳などで殴打し、

右要求に応じなければ更にいかなる危害を加えるかも知れない態度を示して、同人

を脅迫し畏怖させ、よつて同人をして二回にわたり現金合計八万円を交付させて、

これを喝取したというのであるから、同被告人のとつた右手段は、権利行使の手段

として社会通念上、一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱したものである

こと論なく、恐喝罪の判示として何ら欠けるところがないことは、その判文上明ら

かであり、また、所論借用証については、それがすでに被告人ら以外の他の者の脅

迫手段によつて得られたものであるとか、あるいは、被害者は被告人らの脅迫行為

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によつては金員交付を決意するに至らず、その仲裁に入つた者の勧告により支払の

意思を生じたというような所論の事実は、原判決の認定していないところである。

されば、論旨は、原判示に副わない事実を前提とする判例違反の主張であつて、上

告適法の理由にならないものと認められる。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべさものとは認められない。

よつて同四〇八条、一八一条一項但書により裁判官小林俊三の少数意見を除く裁

判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

裁判官小林俊三の意見は次のとおりである。

原審が被告人Cに対しなんら事実の取調をすることなくいわゆる書面審理のみに

より第一審の執行猶予を取り消し実刑を言い渡したのは刑訴法に違反する手続であ

る。従つて本件は職権をもつて原判決を破棄し、原審に差し戻すべきものである。

その理由は昭和二七年(あ)第四二二三号同三一年七月一八日大法廷判決(集一〇

巻七号一一七三頁)に記載したとおりであるからここに引用する。

昭和三二年一〇月一五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 島 保

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 垂 水 克 己

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