大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)1007 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人吉岡秀四郎、同前野順一、同及川武夫の上告理由第一点について。

論旨は、原裁判所は被控訴人(被上告人)と訴外合資会社Dとの間の乙二号証の

契約を使用貸借であるに拘わらず真実の心証に基かずことさら原判示の趣旨の契約

であるように事実を曲げて認定したものであつて、これは実質的に国民の裁判を受

ける権利を奪うに等しいと主張し違憲をいうが、その実質は単なる採証法則違反若

くは事実認定の非難に過ぎない。原判決挙示の証拠によつて原判示のような事実を

認定しても何ら訴訟法則に違反するものでない。所論は理由がない。

同第二点について。

甲が乙に建物を譲渡すべきこと及び乙が甲に土地を貸借すべきことが同一書面に

記載されておりそして右譲渡が贈与であり貸借が使用貸借なることを示す趣旨の文

言がない場合でも、必ずしもこれを土地賃貸借若くはこれに類する有償契約と解し

なければならないものではなく、右書面以外の諸般の事情をも総合して、当事者の

意思が右建物譲渡をもつて土地使用の対価とするにあるか否かを判断して、これを

或は士地賃貸借若くはこれに類する有償契約であると認め或は建物の無償譲渡と使

用貸借の併存であると認めることができるものと解するを相当とする。本件につい

てこれをみるに、原判決挙示の乙二号証には原判示のように控訴会社(上告人)は

判示土地上に存する自己所有の判示建物の所有権を被控訴人(被上告人)に移転す

ること及び被控訴人は控訴会社が右土地を使用することを承諾する旨の記載がある

が右所有権移転が贈与であり土地使用が使用貸借である旨の文言はないけれども、

同号証にはそのほか原判示のような契約条項の記載があり同号証の契約の成立する

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にいたつた事情は原判決が証拠を示して詳記したとおりであるから、右乙二号証契

約の全条項と原判決の採用した諸証拠によつて認められるこれらの事情とを総合す

るときは原判決説示の理由により右乙二号証の契約は控訴会社から被控訴人に対す

る判示建物の贈与と被控訴人から控訴会社に対する判示土地の使用貸借との併存で

あると認めることができるのである。この点に関する原判決の認定、解釈は相当で

あつて、何ら採証法則等の違法はない。(のみならず、原判決は仮定的に、本件貸

借が賃貸借又はこれに準ずべき契約だとしても、無断転貸を理由として昭和二二年

六月二七日適法に解除された事実をも認定しており、この判断は正当である。従つ

て、本件貸借が使用貸借であつても賃貸借であつても本件賃借権確認の請求を排斥

した原判決の結論は相当である。)

同第三点について。

原判決は、所論の契約を上告会社からの建物贈与と上告会社に対する土地使用貸

借との併存と認めたものであつて、原審の採用した証拠によつてかく認めても何ら

違法でないことは前点で説示したとおりである。論旨は、右建物の所有権移転は贈

与でなく、土地使用そのものの対価としてなされたものであると主張し原判決の認

定と異る事実を前提とするものであつて、上告適法の理由とならない。

同第四点について。

原判決の確定した事実の範囲では、本件建物譲渡及び土地使用貸借が地代家賃等

統制令の規定を潜脱する目的をもつてなされたいわゆる脱法行為であるとは認め難

いのみならず、仮に右のような脱法行為であるとしても、右譲渡及び使用貸借契約

がその限度で無効とせられるに止まり、これがため右契約を賃貸借と解しなくては

ならぬことになるものではない。所論は採用することができない。

同第五点について。

所論は借地法九条等の宅地の一時使用の規定の解釈の誤をいうけれども、原判決

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は、本件土地の貸借は当時「近々駅前広場計画が実施されるとの噂があつたので」

「駅前広場計画等の実施までを存続期間とする臨時的暫定的なもの」であつたと認

定しているのであり、原判決挙示の証拠によればかような事実を十分認めることが

できるのである。所論は、原審の適法にした事実認定を非難するに帰し、採用する

ことができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

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