大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)120 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人中曾根貞良の上告理由について。

原審において、上告人は相殺の抗弁事実として、上告人が被上告会社より本件大

豆を買い受けたのは通常の取引としてであつたので、被上告会社は上告人の右買受

行為が詐欺罪を構成しないことを知つているに拘わらず、上告人をして刑事処分を

受けさせる目的からあえてこれを目して詐欺罪とし、上告人を被告訴人として再度

判示検察庁に告訴しいずれも不起訴決定を受けたが、各種組合役員、連合会長、会

社取締役等に歴任した上告人は右の不法告訴により名誉を毀損せられ、信用を失い、

判示一年間自己の営業たる飼料販売を中止するのやむなきにいたりその間得べかり

し営業利益三六万円を失つた、よつて上告人は被上告会社に対し名誉毀損による慰

藉料二〇万円と右喪失利益三六万円の賠償を請求する債権を有する旨主張したこと

記録上明らかである。

しかし、詐欺罪の告訴により告訴人が被告訴人の名誉もしくは信用を毀損する不

法行為をしたことを原因としてその損害の賠償を請求する債権を主張する者は、少

くともその告訴が被告訴人の名誉もしくは信用を毀損することについて、告訴人に

故意もしくは過失があつたことを主張し立証しなければならない。原審において、

被上告会社は右告訴事件について検察庁より「詐欺の事実は認められないから不起

訴にする」との決定の通知を受けたことを認めているけれども、検察官のかような

理由による不起訴決定があつたからといつてそれだけで直ちに告訴人が告訴によつ

て被告訴人の名誉もしくは信用を毀損することにつき故意もしくは過失を有したも

のと推定することはできない。その他本件においては告訴において述べられた事実

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の内容すら明らかにされておらず、右告訴を不法行為であるとするに必要な被上告

会社の故意過失を推断させるに足りる事実上の主張も立証もなされていないのであ

る。されば、原審が上告人の相殺の主張を排斥したのは正当であつて、論旨は違憲

に名を藉り原判決の挙証責任に関する法則の解釈適用を独自の見解を以て違法と主

張するものにほかならず、採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 高 橋 潔

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