最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)464 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人三野昌治の上告理由一、について。
原審は、昭和二五年一月一六日成立した本件代物弁済に関する代位権行使の契約
について、被上告人と訴外Dとの間の準消費貸借において、被上告人の債務元金を
金三十二万円と定めてあるが、その実質額は金十七万四千円にも足らなかつたもの
と判示し、被上告人がこれを期限に弁済しなかつた場合には、債権者がこの金額の
約五倍の価額を有する本件建物の所有権を、代物弁済として取得することを約定し
たものであり、かゝる約定をする事態にいたつたのは、債務者たる被上告人が、苛
酷な条件で借財し、これを弁済し得なかつた結果、窮迫した事情の下に置かれたた
めであると認定した上、かゝる約定を以つて、公序良俗に反し無効のものであり、
上告人Aは、この約定に基く訴外Dの権利を代位行使するに過ぎないのであるから、
本件建物の所有権を取得するに由ないものである旨判断して居る。
しかし、上告人等は原審において、昭和二五年一月一六日、元金三十二万円の右
準消費貸借成立の際、債権者たる訴外D、債務者たる被上告人及び仲介者たる上告
人Aの三者間において、所論代物弁済に関する代位権行使の契約を締結すると共に、
被上告人が上告人Aに対し、右債務の支払を委託し、かつ同上告人においてこの委
託に基き、債務を支払つたときは、被上告人に対して取得する求償権の代物弁済と
して、本件建物の所有権を、同上告人に移転する旨約諾し、その後、同上告人にお
いて、右委託の趣旨の如く、訴外Dに対し右元金及び延滞利息等合計金五十四万千
八百円を支払つたので、右約旨に従つて、同上告人が本件建物の所有権を取得した
ものである旨主張して居る。
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而して若し、上告人等の右主張事実が証拠上認められるならば、右の如き被上告
人の支払委託の趣旨如何によつては、昭和二五年一月一六日の所論代物弁済に関す
る代位権行使の契約は、所論の如く、上告人Aが訴外Dに対し、被上告人のため支
払つた金五十四万千八百円の求償権についての代物弁済予約の趣旨をも包含すると
解すべき場合のあるのは、当然である。従つて原審としては、果して被上告人上告
人Aに右債務の支払を委託したか否か、委託したとすればその趣旨、支払委託の金
額、同上告人が右委託に基き金五十四万千八百円を支払つたか否か、同上告人が右
支払金額の全部につき被上告人に求償できるか否か等を、審理判断すべきである。
それにも拘らず、これを行つた形跡は必ずしも明確でない。原審に所論の如く審理
不尽及び理由不備があるとすべきである。
されば、爾余の論旨を判断するまでもなく、上告は理由があり原判決は破棄を免
れない。
よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 石 坂 修 一
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
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