大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)698 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人寺井俊正の上告理由第一点について。

所論は、原判決に審理不尽または理由不備の違法があると主張するが、要するに

本件土地の所有権移転が仮装虚偽であるとの独自の見解に立つて原審の裁量に属す

る証拠の取捨判断を非難するにすぎない。所論は採用できない。

同第二点について。

本件土地につきDから被上告人に対し売買名義による所有権移転登記のあつたこ

とが当事者間に争いのない事実であることは、原判決の認定するところであり、し

たがつて上告人は、所有権移転の意思表示のあつた事実を認めたことにほかならな

い。そして原審の認定した所論贈与の事実は、右所有権の移転するに至つた経過の

説明たるにすぎず、所論は、所有権移転の意思表示の真実に成立した事実を左右す

るものではない。それ故原判決に所論の違法を認めることはできない。

同第三点について。

所論は、原判決は建物保護法一条の解釈を誤つた違法があると主張する。しかし

地上建物について所有権の登記がない以上、建物の所有者は、右土地を買受けた第

三者に対しては、たといその第三者が買受当時建物の存在することを知つていても、

土地の賃借権をもつて対抗することはできないと解すべきであり、また右の関係は、

土地の新取得者の取得原因が有償であるかないかによつて差異を生ずるものではな

いと解すべきである。同趣旨に帰する原審の見解は正当である。そして特定の財産

が相続財産であるかどうかは相続開始の時に定まるものであるのみならず、贈与と

相続とは別個の法律事実であるから、本件のような土地所有権の移転がたとえ推定

- 1 -

相続人に対する贈与による場合であつても、必ず受贈者を被相続人と同視しこれを

第三者にあらずと解することを要するものではない。本件について見るに、原審の

認定する事実関係の下においては、原審が建物ないし賃借権の登記を経由した事実

の認められない上告人は、被上告人が土地所有権の移転登記を経由した昭和二四年

一月一七日以降これに対抗することはできないとした判断を首肯できないことはな

い。所論は採用できない。

同第四点について。

所論は、民法一条二項三項の解釈を誤つた違法があるというに帰する。しかし原

審の認定によれば、所論のように、被上告人に土地使用の必要がないとはいえない

のであるから、かかる事情の下において権利濫用の主張を排斥した原審の判断は不

当とはいえない。

同第五点について。

所論は、地代家賃統制令の違反等があると主張する。しかし原判示の賃料が統制

令に違反する根拠たる事実につき上告人の主張がない以上、所論の点を判断するこ

となく、証拠によつて認められた賃料に基き損害額を認定したことを違法というこ

とはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 小 林 俊 三

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!