大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(あ)406 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人鍛治利一の上告趣意第一点について。

論旨は、原判決は憲法三八条一項及び二項に違反すると主張する。しかし論旨が

自白を強制されたものであると強調する警察における被告人の供述調書は、第一、

二審共にこれを証拠として挙げていないし、また所論検察官に対する被告人の各供

述調書については、それが任意性を欠くものと認めるべき資料は存しない。それ故

所論違憲の主張は前提を欠くこととなり採用し難い。

同第二点について。

論旨(三)は憲法違反を主張する。原審において弁護人は第一審証人Aを再び尋

問することを求めたにもかかわらず、原審がこれを却下しながら同女の第一審証言

を採つて被告人を有罪としたのは、憲法三一条に違反するというのである。してみ

れば所論の実質は単なる法令違反の主張に過ぎないのみならず、その採用に値しな

いことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)二三〇号同二三年七月二九日大法廷

判決)に照らしてみても明らかである。

論旨(四)はまた憲法三八条三項違反を主張する。しかし所論被告人が牛乳に青

酸ソーダ約六瓦を混入してB方食堂陳列棚の上に差置いたという点については、原

判決が維持する第一審判決は被告人の自白のみを証拠としてその事実を認定してい

るのではなく、第五回公判調書中証人Bの供述記載、領置にかかる牛乳空瓶一本及

び紙蓋一枚の存在等を補強証拠として挙げており、これ等の補強証拠は被告人の右

自白の真実性を保障するに足るものと認められるから、論旨はその前提を欠き採用

できない。

なお論旨は判例違反を主張するが、所論援用の各判例はいずれも本件に適切でな

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い。

その余の論旨は単なる法令違反、事実誤認の主張を出でず、適法な上告理由にあ

たらない。

同第三点について。

論旨は憲法三七条二項違反を主張するが、その実質は単なる法令違反の主張であ

るのみならず、原審において主張されず、その判断を経ていない事項に関するもの

であるから、適法な上告理由にあたらない。

同第四点について。

論旨は単なる訴訟法違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三五年六月二一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 島 保

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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