大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)1179 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人小林右太郎の上告理由について。

論旨のうち、上告会社と被上告人間には原判示のような本件土地の信託譲渡はな

かつたという点は原審の証拠の取捨、事実認定の非難にすぎず、又、これが仮りに

信託譲渡だとしても内部関係では所有権の移転がないという点は、原判決のこの点

に関する証拠の欠缺を主張し原判示に副わない主張であつて採用するに足りない。

(原判決挙示の証拠によれば判示事実を認定することができる。)次に、原判決の

認定した事実によれば、上告会社は昭和一八年一二月一九日本件土地を被上告人先

代Dに信託譲渡し同月二二日その所有権移転登記を了し、又、翌一九年一〇月三日

本件土地および上告会社所有本件外土地を訴外(第一審被告)Eに売渡担保として

譲渡したが、昭和二〇年四月頃上告会社は被上告人先代Dとの間の本件土地の信託

譲渡を解除しこれをDに売渡し(原判決にいう更改)代金の一部を受領した、しか

るに訴外Eはその後上告会社と被上告人先代Dとを相手取つて本件外土地および本

件土地が自己の所有に帰したとして所有権移転登記請求(上告会社に対しては本件

外土地の、Dに対しては本件土地の各移転登記請求)の訴を山口地方裁判所に提起

したところ、その昭和二〇年一一月二八日の口頭弁論期日において上告会社および

D両被告の訴訟代理人はそれぞれの請求を認諾しその旨が調書に記載された、右各

認諾後、改めて上告会社はEから本件土地および右本件外土地を買受けたが登記を

経なかつた、というのである。論旨は、訴外Eが被上告人先代Dを相手取つて本件

土地所有権に基くその所有権移転登記を請求する前記訴訟の口頭弁論期日において

DがEに対してした認諾はそれが調書に記載されたことにより確定判決と同一の効

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力(既判力)を生ずるから本件土地の所有権は爾後Dおよびその相続人である被上

告人には存しないことが確定されたといわねばならない旨主張するけれども、所有

権に基く所有権移転登記請求の訴訟において原告がその基本たる所有権をも訴訟物

たらしめようとする意思をその請求の趣旨で明示的にも黙示的にも全く表明してい

ない場合には、たとえ被告が請求を認諾したからといつて所有権の存在についてま

で既判力を生ずるものといえないこと当裁判所の判例の趣旨とするところである(

昭和二八年(オ)四五七号同三〇年一二月一日第一小法廷判決、集九巻一三号一九

〇三頁)。被上告人先代がEに対してした所論の認諾は右の如き当事者の意思の表

明のあるものとは認められていないのであるから、これによつて生じた既判力の客

観的範囲は本件土地所有権移転登記請求権の存在に止まり基本たるその所有権の存

在にまで及ぶものではないというほかない。してみれば、右認諾を得たEから本件

土地を買受けた上告会社はその登記手続をしなかつたため第三者に対し本件土地に

つきEの承継人たることを主張し得ないとし、その理由から右認諾の既判力は被上

告人に及ばないとして、右認諾による本件土地所有権の存在についての既判力を認

めなかつた原審の判断は結局相当である。論旨は理由がない。

上告代理人原田左近の上告理由について。

論旨は、(イ)被上告人は原審で上告会社主張の昭和一八年一二月一九日の売買

が仮装であることを否認したのだからこれを真実の売買と主張したものと解される

のに、これを信託譲渡と主張したかの如く原判決が摘示したのは失当であるという

が、記録によると、被上告人先代Dの所有権取得登記は仮装売買に基くものである

との上告会社の主張を被上告人は否認し、信託譲渡に基くものであると主張したこ

と明白であるから、所論は採用の限りでない。論旨はまた、原判決において(ロ)

被上告人は信託譲渡の日を昭和一九年二月頃と主張したのにこれを昭和一八年一二

月一九日と認定し、(ハ)被上告人は信託譲渡を売買に改めた日時を昭和二〇年一、

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二月頃と主張したのにこれを同年四月頃と認定したのは違法であるというが、所論

の事実について当事者の主張する日時と所論のように多少異つた日時を認定しても

それだけで直に当事者の主張しない事実を認定した違法あるものというをえない。

論旨は、(ニ)原判決は訴外Fは昭和一九年一〇月三日本件土地その他の上告会社

所有土地につきEとの間に投資契約を結び、右土地の売却ができない場合これを売

渡担保とすることにしたと認定したが、当時上告会社が本件土地を売渡担保として

Eから金員を借受けたことは当事者間に争ない事実であるから、これに反する右認

定は違法であると主張する。しかし原審の右判示は所論の日時に売渡担保契約が成

立したとの趣旨に解されるから原判示には所論の違法はない。論旨は、(ホ)原判

決が被上告人を民法一七七条にいう第三者と解したのは違法であるというが、原判

示の認諾の既判力の客観的範囲は原判示所有権移転登記請求の基本たる所有権の存

在には及ばないと解すべきであつて原判決は結局相当であることすでに上告代理人

小林右太郎の上告理由について説示したとおりであるから、所論の点は原判決に影

響を及ぼさず採用することができない。論旨は、(ヘ)原判決が、被上告人先代D

のEに対する認諾はDの意思に反してなされたと認定したのは失当であるというが、

右判示は認諾がDの意思に反してなされたとの理由で全然その効力がないとする趣

旨ではないと解されるから、原判決に影響を及ぼさず、所論は採用できない。

同第二点について。

論旨第一は原判決の事実認定の非難にすぎず上告適法の理由とならない。論旨第

二の理由がないことは第一点(ニ)の所論について説示したとおりである。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

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裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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