大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)282 判決

主 文

原判決を破棄し、本件を名古屋高等裁判所に差戻す。

理 由

上告代理人楠田仙次の上告理由第二点について。

原判決は、被上告人らと補助参加人との間に昭和二七年六月二三日名古屋簡易裁

判所において、被上告人らはその所有の名古屋市a区b町c番地のd所在木造瓦葺

二階建一棟三戸建のうち東端の一戸(渡厠付)を代金一七五、〇〇〇円で補助参加

人に売り渡し、右代金は、同年六月二四日に八万円、同年八月及び一〇月の各末日

にそれぞれ三万円宛、昭和二八年一月一五日に三五、〇〇〇円の四回に分割支払う

こと、被上告人らは右売買代金の最終支払期日まで右建物のうち中央の一戸を補助

参加人に無償使用させることとし、補助参加人が右分割金の支払を一回でも怠つた

ときは、右売買契約は直ちに解除されたものとして右中央の一戸を無条件で被上告

人らに明渡すことの調停が成立したこと、補助参加人は右分割金を第三回分まで約

旨に従つて支払つたが、最終回分については、被上告人Bより昭和二七年一二月中

頃及び昭和二八年一月五日の二回に亘つてその支払準備方の督促を受けながら、そ

の調達ができず、支払を昭和二八年一月末日まで延期されたい旨懇請したが、被上

告人らの容れるところとならず、遂に同月一五日を徒過してその支払をしなかつた

こと、他方右一月一五日は成人の日として国民の祝日にあたつていて、被上告人ら

の補助参加人に対する右売却家屋の所有権移転登記手続は現実にはたしえない事情

にあつたけれども、被上告人らは予め右登記手続に関する一切の必要書類をととの

え、最終分割金の支払を督促しながら待つていたこと、以上の事実を認定した後、

補助参加人が昭和二八年一月一五日に最終分割金の支払をしなかつたことにより、

前記売買契約は当然解除されたと判断したことは、判文上明白である。

しかしながら、双務契約において、双方の債務が同時履行の関係にある場合には、

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特段の事情がない限り、当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまで、

自己の債務の履行を拒むことができ、遅滞の責を負うものではなく、従つて、相手

方は、自己の債務の履行の提供をしない限り、他方の不履行を理由に契約を解除し

えないのであつて、これを本件について見るに、前記売買契約の売主である被上告

人らの所有権移転登記義務の履行の提供があつたというためには、単に被上告人ら

が右登記手続に必要な一切の書類を準備していたことのみをもつては足らず、原則

として、被上告人らは、右書類を準備の上、法務局に出頭し、直ちに右登記手続を

なしうべき状態に置くことを要するものと解すべきところ、昭和二八年一月一五日

は偶々成人の日として国民の祝日にあたり、登記の申請は受理されない事情にあつ

たというのであるから、右期日における被上告人らの債務の履行の提供は事実上不

可能であつたことが明白であり、従つて、右期日に被上告人らの適法な債務の履行

の提供がなかつた以上、特段の事情のない限り、補助参加人が最終分割金の支払を

しなかつたといつて、当然遅滞の責を負ういわれはなく、前記売買契約が直ちに解

除となるものとはいえない筋合である。

しかるに、原判決は、前記のとおり、最終分割金の支払期日である昭和二八年一

月一五日当時被上告人らが、前記所有権移転登記手続に必要な一切の書類を準備し

て、補助参加人の最終分割金の支払を督促しながら待つていた旨の事実を認定判示

したのみで、何ら首肯するに足る理由を示すことなく、卒然、補助参加人が右期日

に最終分割金を支払わなかつたことをもつて遅滞の責任があるとし、これにより前

記売買契約は当然解除された旨判断しているのであつて、結局、法令の解釈を誤り、

その結果審理不尽、理由不備の違法を犯しているものといわなければならない。

従つて、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

よつて、爾余の論点に対する判断を省略し、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全

員の一致で、主文のとおり判決する。

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最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 横 田 正 俊

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