大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)644 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人森本正雄の上告理由第一点について。

原判決確定の事実によれば、上告人は原判示のような事情のもとに、本件手形及

び小切手に署名し、これを手形及び小切手として訴外Dに交付したというのである

から、たとえ上告人において同訴外人がこれを第三者に譲渡することを予期しなか

つたとしても、本件手形小切手につき有効な振出行為があつたものと認めるのが相

当であつて、この点に関する原判決の判断に何ら違法の点はない。

所論は、原判決確定の事実に副わない事実(手形小切手の振出となるとの認識す

ら欠いていたという事実)を前提として原判決の正当な判断を攻撃するものであつ

てとり得ない。

同第二点について。

(イ) 原審は、上告人に本件手形及び小切手振出の意思があつたものと認めて

いるのであつて、所論錯誤の抗弁はこれによつておのずから排斥されたものという

べきである。

(ロ) なお、本件手形振出にあたり訴外Dとの間に「単なる見せ手形であり、

これを他に譲渡しない」旨の特約があつたというような事由はいわゆる人的抗弁事

由であつて、斯かる抗弁事由を第三者に対抗し得るためにはその第三者が悪意なる

ことを要すべく、この点に関する原審の判断もまた正当である。

同第三点について。

所論はこれを要するに、原審が被上告人に手形法一六条小切手法二一条にいわゆ

る「重大なる過失」ありたるか否やを判断しないことは失当であるというにある。

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しかし、被上告人は本件において有効なる振出及び有効なる裏書譲渡のあつたこ

とを主張して上告人に手形金の支払を求め、上告人はこれに対し振出行為の存在せ

ざること仮に存在するも無効なることを主張抗争したにすぎないのであつて、被上

告人から手形法一六条小切手法二一条に基く本件手形小切手の善意取得を主張した

形跡は全くない。されば、原判決が所論の点につき判断しなかつたとしても何ら違

法ではない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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