大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)955 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人坂井喜次郎の上告理由第一点ないし第五点について。

物の引渡の成否は、個々の場合において、物に対する支配が社会観念上一方から

他の一方に移転されたものと認められるか否かにより決すべきであり、とくに不動

産の場合、当事者双方がその物を熟知しその範囲にも争がないようなときは、単に

その実力的支配を移転する合意があれば足りるものと解すべきである。

本件についてみるに、被上告人Bが昭和二六年八月八日本件宅地を地上建物を収

去して上告人の代理人に明け渡し相手方が異議なく受領したことは、被上告人らが

原審で主張するところであり、原判決挙示の証拠によれば、被上告人Bの妻Dを介

して同被上告人と上告人の代理人との間に前記趣旨の合意があり、右代理人におい

ても格別の異議なくこれを了承した事実を認めることができるから、前記主張事実

を肯認した原判決に、所論審理不尽、採証法則および弁論主義違背の違法があると

はいえない。

また、約旨の猶予期限までに引渡のできなかつた理由と引渡を終るまでの経緯、

右期限後の引渡を相手方が異議なく受領したこと、被上告人Bが和解条項に違反し

た場合の効果の重大性、前記期限までに引渡を受けないと上告人において和解の目

的を達しえられないような特段の事情は認められずその三日後には引渡を終つたこ

と等、原判示の諸事情と挙示の証拠とを併せ、信義則に照らしてみれば、和解の約

旨にしたがつた明渡義務の履行があり、和解条項違反の効果を生じなかつたとした

原審の判断は是認することができるから、その余の論旨も採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

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おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

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