最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)987 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告理由第一点について。
本件の抗告審判及び訴訟において審判の対象となつているのは、原願の発明を六
箇に分割したうちの一の発明の出願を拒否したことが適法かどうかの点であつて、
原願につき拒絶査定をしたことが仮に違法であるとしても、そのことは、本件拒絶
査定及びこれを是認した審決を当然に違法ならしめる理由となるものではない。ま
た、原願と分割願とは別個の事件であるから、審査の段階において同一の審判官が
両者の審査に関与し、また審判の段階において同一の審判官が両者の審判に関与し
たとしても、そのことが所論の特許法の規定に違反するということはできない。さ
らに、抗告審の審判官が原願の分割を示唆したというだけで、ただちに同法九三条
の忌避理由があるといい得ないのはもとより、右示唆したことがただちに本件拒絶
査定及びこれを是認した審決を違法ならしめる理由となるものではない。違憲の主
張を含む所論は、右に反する独自の見解を前提とするものであつて、すべて採用の
かぎりでない。
同第二点及び第三点の(二)について。
原判決は、本件出願にかかる発明の各部分装置は、出願前すでに公知若しくは慣
用されていたものであつて、本件発明は、それらの単なる寄せ集めに過ぎず、それ
らの総合により互に関連して独自の効果を生ぜしめるようなものでない旨を判断し
たものであつて、所論は、原判決を正解しないことに基くものであるか、又は独自
の見解を前提として原審の右判断を非難するに過ぎない。引用大審院判例は、原審
の判断と矛盾するものでないか、又は本件に適切でないものである。所論は採用の
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かぎりでない。
同第三点の(一)について。
原判決は、明細書における「特許請求の範囲」の記載並びに右明細書及び図面の
全体の記載を総合してプレツサーの部分は本件出願にかかる発明の要旨の一部をな
すものでない旨を判断したものであり、右判断は相当である。引用大審院判例は、
右判断と矛盾するものでないか、又は本件に適切でないものである。のみならず、
原判決は、プレツサーの部分とその他の部分とを総合すれば家庭用編物機械として
独自の効果を生ずる新規の発明と解する余地があることを前提として、プレツサー
の部分が「発明の要旨」から除外されているが故に本件出願にかかる発明が新規性
を有しない旨を判断したものではなく、かえつて、プレツサーとその他の部分とが
実施上総合されることを当然の前提として、その場合でも本件発明は新規のものと
は認められない旨を判断したものと解すべきであるから、仮にプレツサーの部分が
「発明の要旨」中に含まれるとしても、原判決に影響はないものと解すべきである。
それ故、所論はすべて採用のかぎりでない。
同第三点の(三)について。
原判決は、引用例に記載された手編機、自動停止装置及び糸導装置の各全体が実
施可能のものであるかどうかを判断したものではなく、右機械乃至装置のうち本件
出願にかかる発明の各部分に相当する部分に関するかぎり実施不可能のものではな
い旨を判断したものであつて、この判断は相当であり、右部分が実施不可能のもの
でないことは、裁判官の通常の知識をもつて判断し得ないではないから、原審がそ
の認定につき証拠調を経なかつたからといつて、所論のような違法があるというこ
とはできない。所論は採用し得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
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最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 石 坂 修 一
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
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