大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和33(オ)103 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人木村一郎の上告理由について。

論旨は、上告人は本訴請求の原因として、上告人が被上告人に賃貸した本件家屋

の賃貸借契約は、被上告人の賃料不払により解除されたことを主張したほか、予備

的の原因として上告人は秋田県より本件家屋を買い受け所有権取得の登記をしてお

り、被上告人は上告人に対抗し得る正当の権限なく本件家屋に居住している旨主張

したにかかわらず、原判決は、被上告人が上告人に対抗し得べき正当の権限なくし

て本件家屋に居住しているとの上告人の予備的請求については判断を遺脱している

ので、民訴三九五条一項六号に該当する違法があると主張する。

よつて記録を調べてみると、上告人が本件第一審繋属中、従来の「賃貸借契約終

了による目的物件返還請求」に併せ「所有権に基き不法占有を原因とする同一物件

の明渡」を請求するに至つたのであつて、右訴の追加的予備的変更が適法になされ

ていることを看取するに十分である。すなわち、本件は秋田簡易裁判所に提訴され

同裁判所において審理されていたのであるが、その昭和三〇年六月二七日午前一〇

時に開かれた口頭弁論において、上告人が「係争家屋は約一五年前に締結された被

上告人と秋田県との間の売買契約に基き被上告人の所有に帰属するに至つたもので

ある」旨の被上告人の主張を援用し「仮に係争家屋につき被上告人主張の如き事実

があつたとしてもその旨の登記を経由しておらず、かえつて上告人は秋田県との売

買契約に基きその所有権を取得しかつ右につきその旨の登記を経由しているから、

被上告人はその所有権取得をもつて上告人に対抗し得ない筋合である、よつて被上

告人の不法占有を原因として所有権に基きその明渡を求める」旨を口頭をもつて陳

- 1 -

述しており、被上告人がこれに対し何等異議の申立をしていないことが明らかであ

り、簡易裁判所においては右の如き訴の変更も書面提出の要なく口頭をもつて足る

と解される(民訴三五三条)からである。そして、その後当事者は賃貸借関係の成

否等より、むしろ右所有権の帰属如何につき主張立証を尽していることが記録に明

らかであるにかかわらず、原審は右所有権の帰属につき認定判断しながら前記追加

的予備的に変更された請求についてその判断をしていないことが原判文上明らかで

あるから、原判決には所論違法があり破棄を免れない。

よつて、本件上告は理由があるものと認められるので民訴四〇七条一項に従い、

裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!