最高裁判所第三小法廷 昭和34(あ)245 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人正木亮の上告趣意第一点について。
所論は、採証法則の違背及びこれを前提とする事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
同第二点について。
記録を調べてみると、原審が第一回公判期日に検察官の職務を行う弁護士の申請
により、仙台高等裁判所第一刑事部のした所論判決謄本(右判決は被告人が放火未
遂の被疑者Aの取調に当たり暴行を加え自白を強要した疑ありとして、同人に対す
る右被告事件につき無罪を言渡したもの)を証拠調したことは明らかである。とこ
ろで、所論は、原審は右判決をした同僚裁判官に対する情誼にとらわれ、本件につ
き、同判決を証拠として、被告人が第一審判決判示のようにAに対し暴行を加えた
旨あえて前示無罪判決に符合するような結論を導き出した。このような原判決は憲
法三七条一項に掲げる公平な裁判所の裁判ということはできないというのである。
しかし、原判決が所論の判決を証拠として、被告人の本件暴行の事実を肯認したも
のでないことは、その判文自体に照らして明らかであるから、右違憲の主張はその
前提において失当といわねばならない。
なお、所論は原審が前記無罪判決を証拠調したこと自体、裁判の独立と公平を害
し、憲法三七条一項に違反すると主張するもののようである。しかし、たとえ、右
無罪判決と本件とが、ともに被告人のAに対する暴行の有無ということを主要な論
点としており、原審各裁判官が右無罪判決を証拠調することにより、事前にその内
容を了知するに至つたからといつて、これにより同裁判官らが職務の執行から除斥
さるべきものでないことは勿論のこと、忌避の理由となるものとは到底認められな
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い(右判決謄本は被告人、弁護人同意のもとに取調べられている)。そして判決裁
判所の裁判官が職務の執行から除斥されず、かつ忌避の理由もない場合には、その
裁判官のした審理判決を憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判ではないと
いうことのできないことは当裁判所大法廷判決の趣旨とするところである(昭和二
四年新(れ)一〇四号、同二五年四月一二日宣告、集四巻四号五三五頁参照)。そ
れ故論旨は採用できない。
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和三七年三月一三日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
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