大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和34(オ)1013 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人中村喜一の上告理由第一点について。

原判決挙示の証拠を綜合すれば、所論昭和二八年一二月二六日保存登記がなされ

た当時には、本件家屋はいまだ独立の建物として存在していなかつたし、また所論

株式会社D建設が独立の建物として本件家屋を所有したことはない旨の原判決にお

ける認定は首肯するに足りる。だから、所論昭和二八年一二月二六日所有者を株式

会社D建設としてなされた保存登記。および、これにもとずいて同二九年一月九日

上告人のためになされた仮登記は、いずれも無効である旨の原判決における判断は

正当であり、原判決には所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の裁量に委

ねられた証拠の取捨判断ないし適法になした事実の確定を、独自の見解にもとずい

て非難するもので採用できない。

同第二点について。

所論民訴三二三条一項の規定は、公文書の成立の推定に関する規定にすぎないの

であるから、文書が同条によりその成立の真正が推定されたからといつて、ただち

に、その記載内容が真正であるとはいいえない。その記載内容の真否の判断は、実

質的証拠力の問題として、事実審裁判所の自由心証に委ねられ、事実審裁判所は自

由な心証により他の証拠によつてその記載内容と異なる事実を認定するに何らの妨

げがない。またこの場合、当事者本人だけの供述によつては記載内容と異なる認定

をなしえないとする理由もない。論旨は、独自の見解にもとずいて原審の裁量に委

ねられた証拠の取捨判断ないし適法になした事実の確定を非難するもので採用でき

ない。

- 1 -

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 高 橋 潔

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 石 坂 修 一

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!