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最高裁判所第三小法廷 昭和35(オ)302 判決

主 文

原判決中上告人の訴を却下した部分を破棄下する。

右部分につき、本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

原判決中上告人の請求を棄却した部分に関する上告を棄却する。

前項の部分に関する上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告理由一、二について。

原判決は、本件(イ)、(ロ)の各建物部分について本件当事者間に締結された

各売買、賃貸借契約の条項中に、「本契約につき紛争を生じたときは双方から一名

宛の仲裁人を選任して当該仲裁人の判断に従う」という条項の存在すること、同条

項は、弁護士である訴外高橋岩雄が民訴法に規定されている仲裁手続を予定してこ

れを作成したものであることおよび前記賃貸借契約の内容は賃貸人にとつて極度に

有利に定められており、同契約に関し債務不履行または契約解除の成否についての

紛争が生じやすいと予測されることを確定したうえ、右仲裁判断条項は民事訴訟法

上の仲裁契約としての効力を有することを前提として、本件(イ)、(ロ)の建物

部分に関する紛争は同条項にいう「紛争」にあたり、右紛争について裁判所の裁判

を求めることはできないと判示している。

ところで、民事訴訟法七八六条以下の規定による仲裁契約の成立には、当事者が

同法にいわゆる仲裁判断に服する意思を有する必要があることは、叙上規定の趣旨

に照し、明らかである。しかるところ、本件賃貸借契約の条項中に弁護士が民事訴

訟法に規定されている仲裁手続を予定して作成した仲裁判断条項があるからといつ

て、同弁議士が本件当事者の一方の代理人として右契約の成立に関与した場合であ

れば格別、当事者が事実上の仲裁をさせる意思で同条項を黙認する場合もないとは

いえず、直ちに、本件当事者が、同条項に規定する紛争については、民訴法にいわ

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ゆる仲裁判断に服する意思を有したものと断定することは困難であり、本件契約に

ついて紛争発生の可能性が大であることからも、必ずしも、右意思の存在を断定し

えないものといわざるをえない。

してみれば、民事訴訟法にいわゆる仲裁判断に服する意思の存在を推認させる他

の特別の事情の存否についてなんら顧慮することなく、前記確定事実に基づいて、

直ちに、本件当事者間に民事訴訟法上の仲裁契約が成立した旨断定した原判決は、

審理不尽、理由不備の違法を犯したものというのほかなく、この点についての論旨

は理由があり、原判決中上告人の訴を却下した部分は、この点で、破棄を免れない。

原判決中上告人の請求を棄却した部分に対する上告について。

上告人の提出に係る上告理由書には、右部分に関する上告の申立についての上告

理由と目すべきものは見当らない。したがつて、右上告の申立は、理由がないもの

として、棄却せざるをえない。

よつて、その他の論旨に対する判断を省略し、民訴三九六条、三八四条、九五条、

八九条、四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 石 坂 修 一

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 横 田 正 俊

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