最高裁判所第三小法廷 昭和36(あ)2164 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人Aの弁護人岡沢完治同三橋完太郎の上告趣意第一点は、被告人Aを無期懲
役に処した第一審判決を破棄して、これに死刑を科した原判決は憲法一三条に違反
すると主張する。しかし、死刑を定めた刑法の規定が憲法一三条に違反するもので
ないことは、判例(昭和二二年(れ)一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・集
二巻三号一九一頁、昭和二四年新(れ)三三五号同二六年四月一八日大法廷判決・
集五巻五号九二三頁)の示すところであり、また控訴審裁判所が、刑訴四〇〇条但
書により第一審判決の無期懲役の宣告刑を変更して、死刑を言い渡すことが、必ず
しも違法ということのできないことも判例(昭和二六年(あ)一六八八号同三〇年
六月二二日大法廷判決・集九巻八号一一八九頁)の明らかにするところである。さ
れば、被告人Aに対して無期懲役刑を言い渡した第一審判決を破棄して、死刑を言
い渡した原判決をもつて、憲法一三条に違反するものとなす所論は採用できない。
同第二点は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
被告人Aの弁護人岡沢完治同得津正熙の上告趣意第一点は、原判決が、第一審に
おいて被告人に無期懲役を言い渡したのは量刑軽きに失するとの検察官の控訴を理
由ありとし、被告人に死刑を言い渡したのは憲法三九条に違反すると主張する。し
かし、憲法三九条は検察官が下級審の無罪または有罪の判決に対して上訴をなし、
有罪またはより重い刑の判決を求めることを禁止する趣旨でないことは、判例(昭
和二四年新(れ)二二号同二五年九月二七日大法廷判決・集四巻九号一八〇五頁)
の示すところである。所論はこれと異る独自の見解を主張するものであつて、採る
を得ない。
同第二点は、原判決が憲法一三条、三一条、三七条一項に違反すると主張する。
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しかし、原判決が憲法一三条に違反するものでないことは、弁護人岡沢完治同三橋
完太郎の上告趣意第一点について説明したところである。また憲法三七条一項の「
公平な裁判所の裁判」とは、組織や構成において偏頗のおそれなき裁判所の裁判を
意味するものであつて、所論の如き理由で、原判決が同条項の規定に違反するもの
ということはできない(昭和二二年(れ)一七一号同二三年五月五日大法廷判決・
集二巻五号四四七頁)。次に憲法三一条違反の主張は、その実質は単なる訴訟法違
反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。かつ同三九三条一項本文
は、控訴裁判所が必要と認めるときは、請求によりまたは職権で、事実の取調べを
することができることを規定しているのであつて、原審裁判所が量刑に関する事情
の調査のため、被害者Bの母Cを証人として取り調べたことは、何ら訴訟法に違反
するところはない。
被告人Dの上告趣意および同被告人の弁護人林円力の上告趣意は、いずれも量刑
不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三九六条、一八一条一項但書(被告人Dについてのみ)によ
り裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
検察官 安田道直公判出席
昭和三七年七月一七日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 横 田 正 俊
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
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