大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)1296 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人代理人菅野次郎の上告理由第一点について。

一ないし三について。

原審は、挙示の証拠ならびに弁論の全趣旨により、被上告人が昭和二八年三月二

五日、さきに上告人に託しておいた届書により上告人が婚姻届をするのを阻止する

目的で、同日付をもつて、自己の本籍地である新潟県岩船郡a町の町長にあて、「

事情があるため、自己の戸籍につき移動の申請があつても、事情解決するまで、そ

の受理を保留されたい」旨記載した戸籍移転保留の件と題する書面(甲第一号証)

を送付し、右書面はその頃同町役場に到達した旨認定したのである。所論は、右は

虚無の証拠に基づく認定であると非難する。しかし、原判決挙示の証拠が原審にお

いて適法に顕出されたものであること記録上明瞭であり、しかも、該証拠に照らす

と、前示認定は正当として是認することができる。所論は、畢竟、証拠の判断なら

びに事実認定に関する原審の専権行使を攻撃するものであり、採用できない。

四について。

原審は、昭和二八年四月下旬頃、被上告人の実兄訴外Dは、被上告人と相談のう

え、上告人の実家に電話をかけ、上告人の実母Eに対し、被上告人は上告人との婚

姻継続を遂に断念した旨を通告し、上告人においてこれを了知したとの事実を認定

したのである。所論は、右認定を目して、婚姻の当事者でない被上告人の実兄が上

告人の母に対し、電話で、本人に婚姻意思のないことを話したことをもつて有効な

婚姻意思の撤回と解したものと非難するが、原判示を正解しないことに出た所見で

あり、採用できない。しかして、原判決挙示の証拠によれば、前示認定は是認する

- 1 -

ことができ、右認定の経路に所論の違法があることを見出せない。されば、その余

の所論もまた採用し難い。

同第二点について。

記録によれば、被上告人は、昭和三二年四月一七日の第一審口頭弁論期日に所論

甲号各証を提出したが、上告人が右期日に出頭しなかつたため、裁判所は上告人の

認否をまたず、右書証の証拠調をしたことが認められ、右証拠調の結果は、昭和三

三年七月一六日の原審口頭弁論期日において、当事者双方が第一審口頭弁論の結果

を陳述することによつて顕出されたことが明らかである。原審が証拠調を経ない書

証を事実認定の資料に供したという所論は採用できない。また、所論甲号各証のう

ち原審が事実認定の資料に供したのは、甲第一、一四号証のみであるが、原判決が

証拠を挙げてその真正に成立したことを肯認する旨判示しているところからすれば、

上告人において右甲第一、一四号証の成立を争う趣旨を摘示したものと解せられな

くはない。したがつて、原判決には民訴一九一条違背の違法はない。その余の甲号

各証に関する所論は、右書証が原判決において認定資料に供されていないから、判

決に影響を及ぼすべき事項の主張にあたらない。所論はすべて採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!