大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)1337 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人江幡清の上告理由について。

原審が証拠により確定した事実関係を要約すれば、本件当事者間の婚姻関係は、

上告人が長女Dを懐姙した頃からやや円満を欠くに至つたところ、

(一)昭和三〇年四月九日夜には、かねてから折合の良くなかつた被上告人の父

から分娩手当のことを詰問されたため長女Dを背負い婚家を出ようとした上告人を、

被上告人が殴りつける等相当強引な方法で引止めるという事件が発生し、ついで、

(二)同月一五日には、朝出勤した上告人が勤務先から実家に立寄り、長女Dを

婚家に置き去りにしたまま、ついに婚家に帰らないといういきさつがあつた後、

(三)同月二四日には、上告人側からは上告人の兄等、被上告人側からは本人及

び父、これに両媒酌人が加わつて会談の末、上告人と被上告人とは離婚すること、

長女Dは被上告人方で養育すること、上告人の荷物は約一週間後の次の日曜日に引

取ることとし、その際離婚届に双方調印することという別れ話が成立するところま

で問題は発展したところ、

(四)上告人は、約定の期日を待たず、その翌二五日、自ら、両媒酌人立会の下

に、被上告人不在の婚家から荷物全部を引取つたばかりでなく、上告人自身として

は右会談の結果には必ずしも同意していないことを被上告人になんら通ずるところ

がなかつたため、

(五)被上告人は、全く離婚の覚悟を固めてしまい、その後上告人が意をひるが

えして離婚届をすることに同意せず、被上告人と別れたくない気持を訴えたのに対

してもこれを受け付けず、母が病身であり、長女Dの養育のため女手を必要とする

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ところから、昭和三一年二月中訴外Eと事実上の再婚をし、同人との間に二子をも

うけるに至つたというのである。

原審は、右事実関係に基づき、本件当事者間の婚姻関係は、実質的には、すでに

上告人の右(四)の荷物引取の頃において破綻するに至つたものと判断しているが、

その後の上告人の態度に徴し、右判定には若干疑問を挾む余地があるにしても、被

上告人のその後の再婚、二子の出生により本件婚姻関係が全く破綻するに至つたこ

とは論のないところである。

しこうして、婚姻関係が破綻した場合においても、その破綻につきもつぱら又は

主として原因を与えた当事者は、自ら離婚の請求をなしえないものと解するのを相

当とするところ、原判決によれば、原審は、本件においては、上告人の前記(二)

の家出は軽卒のそしりを免れないとともに、(三)の会談に出席すべきであつたの

に出席せず、しかも自己の本心を被上告人に通ずることを怠つたばかりか、その会

談の結果の裏付ともなるべき前記(三)の荷物の引取を約定の期日前に敢行したた

め、被上告人が離婚の意思を固めたのは当然のことであり、その後、上告人が婚姻

関係の復活についてもかくべつの努力をしていない点からみて、破綻の責任は、全

部とはいわないまでも、その大半は上告人においてこれを負担すべきものであり、

被上告人がその後事実上の再婚をしたことも、長女養育のためであり、さかのぼれ

ば上告人が長女をおいて実家に復帰したことに相当部分の原因があることを思えば、

婚姻関係復活不能の責任も、その大部分を上告人に帰するほかなく、被上告人には

僅かな責任しか認めがたいと判断したことが明らかである。所論は、要するに、原

審の右判断を非難し、ことに、離婚問題の解決を待たずに法律無視の不徳義な再婚

を敢てして婚姻関係の復活を不能ならしめた責任は一に被上告人にあると主張する

のであるが、本件の事実関係を総合して考えるときは、本件婚姻の破綻については、

被上告人にも相当の責任が認められないではなく、ことに、いかなる事情があるに

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もせよ、離婚手続をとらないで事実上の再婚関係に入り婚姻の破綻を決定的なもの

としたことについては、被上告人の責任は決して軽少とは認め難いので、右破綻の

責任の大半が上告人にあり、ことに被上告人の再婚についても上告人にその大部分

の責任があるかのごとき原審の判断の当を失していることは、まことに、所論のと

おりであるが、他面において、前記のごとき事情の下においては、右破綻につき被

上告人がもつぱら又は主としてその原因を与えたものと認定することもまた困難で

あるといわなければならない。

しからば、本件婚姻については、これを継続し難い重大な事由があるとして、被

上告人の本訴請求を認容した原判決は、前段に説示したところに照し結局、正当で

あり、論旨は独自の見解の下に原判決を論難するに帰し、所論引用の判例も本件に

は適切でなく、所論はついに採用することをえない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 石 坂 修 一

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