最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)14 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人馬渕分也の上告理由第一点について。
転貸借の効力は、その当事者の合意とこれに対する賃貸人の承諾とにより効力を
生ずるものであつて、転貸借が適法に成立したものである旨判断した判決の確定に
よつて始めてその効力を生ずるものと解すべきではない。本件家屋の所論賃貸借に
ついても亦、所論敗訴判決の確定をまつて、始めて契約の日に遡及してその効力を
生ずるに至つたとなすべき法律上の根拠を見出し得ない。而も第一審並に原審の各
判決及び記録により認め得る上告人の主張自体、上告人が本件家屋を訴外Dに対し、
賃料月三千円、毎月末払の約定にて賃貸中、右Dは、昭和三〇年七月本件家屋の一
部を被上告人に対しこれと同一約定にて転貸し、被上告人はその賃料を約定期日に
支払つて居つたとして居り、所論確定判決において、右転貸借は、これに対し賃貸
人である上告人の承諾があつたので適法に成立して居つたものである旨確認せられ
て居る。したがつて被上告人は適法に成立した転貸借の約定期日に転借賃料を支払
つて居つたものであるから、これを以つて、民法六一三条所定の借賃の前払に当る
ものと解すべきではない。原判決も亦、これと同旨の判断をして居るのであつて、
同条の解釈を誤つて居るとするのは、当らない。
論旨は、本件家屋の転貸借は、これを適法に成立したものと確認した判決の確定
以前に、転借賃料を支払つたことのみを前提として、原判決が民法六一三条の解釈
を誤り、ひいては憲法一四条に違反したものであると主張するけれども、前提にお
いて既に失当である。
論旨は、理由がない。
- 1 -
同第二点について。
論旨は、原判決の憲法八一条違反を云為するけれども、その実質は結局、原審に
おいて、第一審判決が法律の解釈を誤つた判例を援用して上告人を敗訴せしめたも
のである旨主張したにも拘らず、原判決はこれに対する判断を示さなかつたから、
原判決に判断遺脱、理由齟齬の違法があるとするに帰着する。
しかしながら、原判決は、本件家屋の転借人である被上告人において、その転借
賃料を約定の支払期日に支払つて居つたのであつて、民法六一三条所定の借賃の前
払に当らない旨判断して居ること前段説明の通りである。この判断は、所論判例に
合致するものであるから、右判例を正当とし、これにしたがつたことを示して居る
に外ならないのであり、したがつて原判決は、所論主張に対する判断をして居るも
のと解すべきである。原判決に所論の違法の迹を見出し得ない。
論旨は、理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 石 坂 修 一
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
- 2 -