最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)601 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人桑江常善の上告理由第一、第二点について。
書面によらない負担付贈与契約に基づき、贈与者もしくは受贈者のいずれか一方
において債務の履行を完了したときは、当事者双方ともに、書面によらない贈与で
あることを理由にして右契約の全部もしくは一部の取消しをすることは、許されな
いものと解するを相当とする。本件において、原判決は、挙示の証拠等により、判
示のような経緯のもとに、昭和二三年六月一九日に原判示の土地につき上告人主張
の贈与契約が締結された事実は認められないこと、昭和二八年六月一〇日被上告人
と上告人との間で(イ)被上告人は同日上告人に対し原判示の土地三五四坪一合八
勺を贈与してその旨の所有権移転登記をすること(ロ)上告人は右登記を受けた後
遅滞なく右土地のうち本件土地にあたる部分につき分筆登記をした上これを被上告
人に贈与し、かつその旨の所有権移転登記をすることを内容とする契約が成立した
こと、被上告人は、右契約に基づき、翌一一日上告人のため前記土地三五四坪一合
八勺につき贈与による所有権移転登記を経由し、上告人は本件土地の分筆登記を完
了したこと、上告人は被上告人に対し、昭和三四年三月一七日到達の書面により、
前記契約は書面によらない贈与であることを理由にこれが取消の意思表示をしたこ
とを確定した上、前記契約は、被上告人から上告人に対し土地三五四坪一合八勺を
贈与することに対する負担として、上告人において右土地のうちから本件土地四一
坪四合五勺を分筆登記の上これを被上告人に贈与しかつその旨の所有権移転登記を
することを内容とする一箇の負担付贈与契約であると解すべきであるから、被上告
人側でなすべき贈与およびその登記が既に完了した後において、上告人が、書面に
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よらない贈与であることを理由に、自己のなすべき贈与およびその登記を目的とす
る契約部分を取消すことは許されない旨判示している。原審の右認定および判断は
首肯するに足り、その判断の過程において所論のような審理不尽、採証法則違背、
理由不備、法令違反は認められない。
所論は、独自の見解に基づき、原審の認定にそわない事実を主張して原判決を非
難するものであつて、採るをえない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 河 村 又 介
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 横 田 正 俊
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