大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和39(オ)403 判決

主 文

原判決中上告人に対し被上告人から一三二万〇、九〇〇円の支払を受け

るのと引換えに建物の所有権移転登記および引渡しをすべきことを命じた部分を破

棄する。

右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人小林忠雄の上告理由について。

論旨は違憲をいうが、その実質は単なる法令違背を主張するに帰する。

しかして、借地法一〇条の買取請求の目的となつた建物の時価は、建物を取り毀

した場合の動産としての価格ではなく、建物が現存するままの状態における価格で

あつて、借地権の価格そのものは加算すべきではないが、右建物の存在する場所的

環境はこれを斟酌して算定すべきものであることは、当裁判所の判例とするところ

である(第三小法廷昭和三五年一二月二〇日判決、民集一四巻一四号三、一三〇頁

参照)。本件において、原審は、本件各建物の「現存するままの状態における価格」

は一坪当り一万四、八〇〇円(総額一三二万〇、九〇〇円)であると認定判示した

のであるが、原審が右認定に供した鑑定の結果と照合してみると、当該価格は、建

築費のみを基準として算出した建物自体の価格に外ならないことが明瞭であり、さ

らに、本件建物がその存在する場所的環境によつて有すべき価格を加算した形跡を

判文上窺うことができないのである。たとい、原判示のごとく、「本件建物はいず

れも昭和一六年頃の建築にかかり、構造、用材、工事等は同様なものであつて、一

坪当りの建築費及び残存価格はいずれも同一であつて、同一の場所に存し環境に殆

んど差異なく、各建物価格に差等を付する理由にとぼしい。」としても、その故に、

本件建物の時価の算定にあたり場所的環境を斟酌する必要がないとか、これを斟酌

する余地がないとかいうことはできない。したがつて、原判決は借地法一〇条の解

- 1 -

釈適用を誤つたものといわざるをえず、論旨は結局理由があり、原判決中上告人に

対し被上告人から一三二万〇、九〇〇円の支払いを受けるのと引換えに本件建物の

所有権移転登記および引渡しをすべきことを命じた部分は破棄を免れない。�

よつて、右部分につきさらに審理を尽くさせるため本件を原審裁判所に差し戻す

のを相当と認め、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり

判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 田 中 二 郎

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 横 田 正 俊

裁判官 柏 原 語 六

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!