大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和39(オ)728 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人庄司進一郎の上告理由一について。

民訴法一九一条は、判決原本に裁判官が署名することを要する旨規定しているの

であつて、判決正本にまで署名することを要求している趣旨ではない。論旨は、結

局、原判決の法令違背の主張にあたらないのみならず、記録によれば、一審判決原

本には判決の基本たる口頭弁論に関与した裁判官後藤寛治の署名のあることが明ら

かである。従つて、論旨は理由がない。

同二について。

解約申入れによる家屋賃貸借契約の終了後において、なお賃貸借の存続を主張す

る旧賃借人から旧賃貸人に対し賃料として支払つた金員を旧賃貸人が受領したとし

ても、そのことから直ちに旧賃貸人が解約申入れを撤回したとか或は新たに賃貸借

契約を締結したものと認めなければならないわけではない。原審は、少なくとも本

件解約申入れの効果発生後は、被上告人は上告人の提供した金員を賃料相当の損害

金として受領していたものであると判断しているのであつて、右解約申入れから本

件訴訟提起にいたるまでの経緯につき原審の認定した事実関係に照らせば、原審の

右判断は相当であり、これに所論の違法は認められない。

また、賃貸人が賃貸物の使用収益に必要な修繕義務を負うことは所論のとおりで

あるが、原判決(引用の一審判決)の確定したところによれば、本件家屋は全体的

にみて破損腐朽が甚だしく、厚生省保安度調査評点に基づくいわゆる危険建物であ

つて、その損傷の程度は時間の経過とともに増大する傾向にあり、また、地震に遭

遇した場合は本件建物の倒壊の結果隣接の公衆浴場をも倒壊せしめるおそれがあり、

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完全な朽廃の寸前にあつて姑息な修理では到底建物として維持できず、隣接建物へ

の損害の除去防止のためにも殆ど新築に近い大修理を施すかまたは取りこわすより

外なく、公安上からも本件建物を現状のまま放置することは許されないというので

あつて、右認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。しか

して、右事実関係のもとにおいては、本件解約申入れに正当事由があるものとした

原審の判断は正当である。

従つて、論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 田 中 二 郎

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 柏 原 語 六

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