大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和42(あ)810 判決

主 文

原判決および第一審判決を破棄する。

本件を大阪地方裁判所に差し戻す。

理 由

被告人本人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、弁護人酒井

大の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いずれも、刑訴法四〇五条

の上告理由にあたらない。

しかし、職権により調査するに、当審において、弁護人から取調を求められたA

名義の戸籍抄本は、当裁判所がこれを公判に顕出したのみで、事実審におけるがご

とき証拠調の方法は採られていないが、原判決の是認した第一審判決の事実認定の

当否を判断する資料に供することは許されると解すべきところ(昭和二九年(あ)

第一六七一号同三四年八月一〇日大法廷判決、集一三巻九号(上)一四一九頁参照)、

右戸籍抄本によれば、Aなる者が、被告人の外国人登録証明書に記載された生年月

日に、韓国全羅南道莞島郡ab番地において出生していることが窺われる。これに

よると、被告人が第一審以来弁解しているように、被告人の戸籍上の氏名もAであ

り、生年月日にも偽りはなかつたという可能性も考えられるわけである。そうする

と、第一審判決が証拠としたB名義の戸籍(謄本。これには出生の届出の事実の記

載がない。)のほかに、被告人の真実の戸籍は存在しないという十分な証明がなさ

れているとは認められない本件においては、被告人が、登録事項確認申請にあたり、

氏名、生年月日が虚偽であることを認識しながら、その申請をしたものとするには、

なお疑問が存するものというべきであり、前記A名義の戸籍抄本と被告人との結び

つき等について、なお審理を尽くすべき必要があると認められる。

しからば、被告人を有罪とした第一審判決およびこれを是認した原判決は結果的

に審理不尽の違法をきたし、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、こ

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れを破棄しなければ著しく正義に反するものといわざるを得ない。よつて、刑訴法

四一一条一号、四一三条本文により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す

る。

検察官 平出禾公判出席

昭和四二年九月一九日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 柏 原 語 六

裁判官 田 中 二 郎

裁判官 下 村 三 郎

裁判官 松 本 正 雄

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