大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和43(し)38 決定

主 文

原決定を取り消す。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由

申立人本人の抗告趣意は、別紙記載のとおりである。

所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四三三条の抗告理由

にあたらない。

しかし、所論にかんがみ、職権をもつて調査すると、まず、記録によれば、本件

の経過は、次のとおりである。

申立人は、同人に対する道路交通法違反被告事件について昭和四三年三月一九日

名古屋簡易裁判所において罰金三千円に処する旨の有罪判決を受け、これに対し名

古屋高等裁判所に控訴を申し立て、同裁判所刑事第二部は、同年四月九日、同事件

の控訴趣意書差出最終日を同年五月二日と指定し、同部裁判長は、同じ四月九日、

同事件の公判期日を同年五月二三日午前一〇時と指定したので、担当裁判所書記官

は、同じ四月九日、公判期日召喚状、弁護人選任に関する通知書、弁護人選任に関

する回答書用紙を一括して同封し(そのほかに控訴趣意書差出最終日通知書をも同

封したかが、後記のとおり問題である。)、申立人に宛てて特別送達郵便に付し、

その封書は、翌四月一〇日申立人の住居において同居人Aにより受領された。この

特別送達については郵便送達報告書が作成されているが、その報告書中の送達書類

の名称欄は、あらかじめ裁判所職員が記載するものであるところ、これには弁護人

選任に関する通知書、公判期日召喚状のほか控訴趣意書差出最終日通知書が記載さ

れ、従つて、郵便送達報告書の記載上は控訴趣意書差出最終日通知書も送達された

ことになつており、その控訴趣意書差出最終日である同年五月二日までに申立人か

ら控訴趣意書の差出がなかつたので、同裁判所刑事第二部は、同月四日、控訴棄却

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の決定をした。これに対し、申立人は、「四月九日付で公判期日召喚状が他の同封

書類二通とともに送られて来た。召喚状によると、五月二三日午前一〇時に出頭さ

れたいという内容であつた。ところが、意外にも控訴棄却決定書が送られて来た。」

との理由で同裁判所に異議の申立をしたところ、同裁判所刑事第一部は、特に事実

の取調を行なうこともなく、同年五月一三日、「記録によれば、控訴趣意書提出最

終日通知書は、適式に被告人に送達されていることが認められるから、被告人がそ

の最終日までに控訴趣意書を提出しなかつた以上、決定により控訴が棄却されるべ

きことは明らかである。」との理由により異議申立棄却決定をしたので、申立人は、

「公判期日召喚状、弁護人選任に関する通知書と回答書用紙は送達を受けたが、控

訴趣意書差出最終日通知書は送達を受けなかつた。」との理由により本件抗告に及

んだものである。

右の経過によれば、前記郵便送達報告書の記載上は、控訴趣意書差出最終日通知

書も申立人に送達されたことになつている。しかし、申立人方の同居人Aは、その

封書を受領した際、封書を開披することができる立場にあつたかどうか、そして、

その立場にあつたとして、現にこれを開披して在中書類が郵便送達報告書の送達書

類の名称欄に記載のとおり相違ないことを確認したうえ、その報告書に受領印を押

捺したものであるかどうかは、明らかではない。他方、書類の発送を取り扱う裁判

所職員が、殊に数通の書類を同封して発送する場合、書類を封筒に入れ忘れること

も、全くあり得ないことではない。申立人は、異議申立の理由として、公判期日召

喚状ほか二通の書類しか送達を受けていないと主張しているが、前記のとおり、裁

判所からは申立人に対し弁護人選任に関する回答書用紙を含めて四枚の書類を送達

したはずであるから、右異議申立の趣旨は、控訴趣意書差出最終日通知書を受領し

ていないことを主張していると認められるのである。

このような事情のもとにおいては、異議申立を受けた原裁判所としては、郵便送

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達報告書の記載上送達されたとされている書類の内容に疑いの余地があるのである

から、申立人に控訴趣意書差出最終日通知書が送達されたかどうかを判断するには、

なお、関係者の取調等事実の取調を必要とするものといわなければならない。

ところが、原裁判所は、他に何ら事実の取調を行なうことなく、記録上控訴趣意

書差出最終日通知書は適式に申立人に送達されていると認定して、異議申立を棄却

したのである。この原裁判所の措置には、右説示に照らして明らかなように、審理

不尽の違法があるものというべく、その違法は原決定に影響を及ぼすべきものであ

り、原決定を破棄して事実の取調をすることにしなければ著しく正義に反すると認

められる。

よつて、刑訴法四一一条一号、四三四条、四二六条二項により、原決定を取り消

し、さらに本件異議申立の当否について審理させるため、本件を原裁判所に差し戻

すべきものとして、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり決定する。

昭和四三年九月一七日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 下 村 三 郎

裁判官 田 中 二 郎

裁判官 松 本 正 雄

裁判官 飯 村 義 美

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