最高裁判所第三小法廷 昭和43(行ツ)82 判決
主 文
原判決を破棄し、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人田中一男の上告理由および上告参加人代理人花村美樹、上告参加人指
定代理人東隆一(名義)、同服部守(名義)、同新保喜久(名義)、同加藤学、同
山田純正、同古森明朗の上告理由について。
原判決によれば、本件土地についてされた本件買収処分は、非農地を農地として
されたものではないが、右処分当時、本件土地については自作農創設特別措置法五
条五号による買収除外の指定がされるべきであつたにかかわらず、右指定を受ける
ことなく買収した違法があり、そのかしは重大かつ明白であるから、本件買収処分
は無効というべく、したがつて、無効な買収処分を前提としてされた本件売渡処分
もまた無効であつて、本件土地は依然として被上告人の所有に属するから、本件土
地につき上告人に対して所有権移転登記手続を求める被上告人の本訴請求は、その
余の争点につき判断するまでもなく、認容すべきであるというのである。
よつて按ずるに、本件買収処分当時、本件土地が農地であつたとする原判決の認
定は、挙示の証拠に照らして肯認することができる。しかし、本件土地の買収当時
の状況およびその後における本件土地付近の発展の状況に関する原判決の認定事実
から、前記買収除外の指定をすることなくしてした本件買収処分をただちに無効で
あるとした原判決の判断は首肯しがたい。すなわち、右認定事実によれば、本件買
収処分が行なわれた昭和二三年一〇月当時、本件土地を含む一帯につき土地区画整
理事業が施行され、すでに知事の換地処分の認可がされていたが、その区画整理区
域は、名古屋市a区のc公園南方を東西に走る市電通りの南側裏通りから南へ拡が
る南北最長約九〇〇メートル、東西最長約六七〇メートルの地域で、右地域の中央
には南北に通ずる大通り(b通)を配し、その他の部分にも縦横に整然と道路が設
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けられ、本件土地は右b通の西裏通りに存在し、前記北方市電通りまで約四五〇メ
ートルの位置にあるところ、右b通の北端および東側の状況については、右北端に
ある市電c公園停留場北側大鳥居周辺には古くから人家が密集し、また、b通の東
側には旧住宅営団d住宅の造営工事が進行中であり、右地区の南東部にはD電機株
式会社の社宅区域があり、その他の部分にも続々住宅が建設され、昭和三〇年一二
月当時にはb通東側のe町、d町はほとんど全部宅地化し、f町にも大小の建物が
相当数建てられていたというのであるが、前記b通の西側にある本件土地およびそ
の周辺の状況については、b通の東側に比して宅地化が遅れ、昭和三〇年一二月当
時本件土地から市電通りに至る裏通りに十数戸の建物が点在し、昭和四一年六月当
時には、本件土地の周囲には新聞店、アパートが建てられ、さらにその周囲には多
数の建物が存在し、b通の本件土地から一〇〇メートル余の地点にはバスの停留場
も設けられていたが、本件土地の周囲にはなお田、畑ないし雑草の生えた休閑地が
存していたというのである。なお、原判決が別に認定しているところによれば、買
収当時、本件土地は従前から引き続き水田として耕作され、周辺の土地もほぼ同様
の状況にあり、換地処分認可後も本件土地の登記簿上の地目は依然田とされ、区画
整理の結果開設された道路もほとんど農道としてのみ使用されていたというのであ
る。以上のような諸事実によるかぎり、本件買収処分時およびその後の時期におい
て、b通の東側については宅地化が相当に進んでいたとは思われるが、その西側に
ある本件土地およびその周辺では宅地化はかなり遅れているのであつて、本件土地
については、本件買収処分当時、近く土地使用の目的を変更することを相当とする
農地であつたといえないことはないとしても、だからといつて、本件土地について
買収除外の指定をしなかつたことにつき重大かつ明白なかしがあつたとまでいうこ
とはできない。要するに、原判決が根拠とした事実だけからは、本件土地につき買
収除外の指定をしないでした本件買収処分が無効であるとする原判断は首肯しかた
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いといわざるをえない。ゆえに、原判決には右無効の判断につき理由不備等の違法
があるものとして破棄を免れず、この点の論旨は理由がある。
よつて、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決を破棄し、さらに審
理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い、
裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 下 村 三 郎
裁判官 田 中 二 郎
裁判官 松 本 正 雄
裁判官 関 根 小 郷
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