最高裁判所第三小法廷 昭和44(オ)477 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人村田左文の上告理由について。
株式会社の業務執行に関する内部的意思決定は、法令または定款をもつて株主総
会の権限とされているものを除いて、取締役会の権限に属する。しかし、株式会社
は、取締役会に属する右権限のうち、法令が特に取締役会において決議すべき事項
であると定めたものを除いては、定款をもつて、代表取締役に委任することができ
るものと解すべきである。
これを本件についてみるに、訴外D株式会社の定款に、所論のとおり、会社の業
務の方針その他重要なる事項は取締役会においてこれを定める旨規定されているの
は、業務執行に関する内部的意思決定権限のうち、法令および右定款の規定により
特に取締役会の決議事項とされているものを除いては、代表取締役に委任する趣旨
を含むものと解するのが相当である。したがつて、右訴外会社の代表取締役が取締
役会の決議に基づかないでした個々の業務執行行為をもつて内部的に適法な意思決
定を欠くものというためには、当該行為が、右定款をもつて代表取締役に委任され
た事項にあたらず、定款上取締役会の決議を要するものと定められている重要事項
に該当するものと認められる場合でなければならない。
ところで、株式会社の代表取締役がした対外的な個々的取引行為が内部的に適法
な意思決定を欠く場合でも、右取引行為は原則として有効であつて、ただ、行為の
相手方が内部的意思決定における瑕疵の存在を知りまたは知りうべかりしときに限
つて、右瑕疵を理由に行為の無効を主張することが許されるものと解すべきである
から、本件建物の売買に対して訴外会社の代表取締役Eがした追認につき、右の趣
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旨で無効を主張する上告人としては、その主張をもつて被上告人に対抗する前提と
して、まず、右売買の追認が取締役会の決議に基づいてすることを要する定款所定
の重要事項にあたり、それ故、右追認について取締役会の決議を経ていないことが
適法な内部的意思決定を欠くこととなることを、事実関係について明らかにする必
要があるものというべく、右追認が前記重要事項に該当することが認められない限
り、その主張は前提を欠くものとして排斥を免れないことが明らかであるといわれ
なければならない。�
原判決は、その措辞がやや簡に失する嫌いはあるが、結局、叙上と同趣旨におい
て上告人の無効の主張を排斥したものと解することができるから、原判決に所論の
違法は存しない。論旨は、訴外会社の業務執行に属する対外的な個々的取引行為は
すべて取締役会の決議に基づいてすることを要するという誤つた前提に立つて、原
判決の違法をいうものであり、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 関 根 小 郷
裁判官 田 中 二 郎
裁判官 下 村 三 郎
裁判官 松 本 正 雄
裁判官 飯 村 義 美
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