最高裁判所第三小法廷 昭和45(オ)389 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人西山陽雄の上告理由について。
民法七一五条三項による求償権の行使が信義誠実の原則に則り、権利の濫用にわ
たらないようにされなければならないことは勿論であるが、右求償権の成立につい
ては被用者の行為に故意または重大なる過失があることを要件とすべきであるとす
る所論、または、被上告人に報償責任、危険責任を認めるべき事情があるから、少
なくとも、本来被害者に支払われる賠償金のうち最低その半額は使用者の負担に帰
すべきいわば事業経営上の必要経費として考えるべきであり、この部分については
求償権は成立しないとする所論は、ただちにはこれを採用しがたい。とはいえ、も
とより、民法七一五条一項が被用者のなした当該不法行為に直接加工しない使用者
に対しても賠償責任を負担せしめたのは、ひとえに公平の観念に基づくものである
から、使用者が被用者に求償権を行使するに当つて、使用者の事業の性格、規模、
被用者の業務の内容、加害行為の態様その他諸般の事情を考慮し、求償権の行使が
被用者に対して公平の観念に反すると認められる場合には、民法七一五条三項に基
づく求償権の行使は許されないものと解すべきものではあるが、しかし、原判決の
確定した事実関係に照らせば、被上告人の上告人に対する本件求償権の行使がいま
だ公平の観念に照らして許されないものと解すべき事情はうかがわれない。したが
つて、被上告人の本訴請求を認容した原審の判断は結局正当であり、論旨は理由が
ない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
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最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 飯 村 義 美
裁判官 下 村 三 郎
裁判官 松 本 正 雄
裁判官 関 根 小 郷
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