大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和46(あ)616 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人青木正芳の上告趣意第一点は、判例違反をいうので検討するに、詐欺罪に

おいて財物の騙取がなされたと認められるためには、欺罔行為による錯誤に基づい

て財物の現実の交付、すなわち、占有移転がなされることが必要であるが、その占

有移転が実体的な権利の移転を伴うかどうかの点は詐欺罪の成否にかかわりがなく、

その占有移転の私法上の効果も同罪の成否に関係がないものというべきである。所

論の攻撃する原判決の判示のうち、欺罔によつて財物の交付がなされても占有権は

移転せず、交付者がその占有権に基づいて返還請求をなし得る場合があるかのよう

に表現されている点は容易に理解し難いところであるが、右判示を全体としてみれ

ば、その意味するところは、前記の当裁判所の見解と同一の趣旨に帰着するものと

みることができる。したがつて、原判決のした判断はなんら所論引用の判例に牴触

するものではないから、所論は理由がない。同弁護人の上告趣意第二点は、事実誤

認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

また、記録を検討しても、本件について刑訴法四一一条を適用すべきものとは認

められない。

よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

昭和四七年三月二八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 田 中 二 郎

裁判官 下 村 三 郎

裁判官 関 根 小 郷

裁判官 天 野 武 一

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裁判官 坂 本 吉 勝

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