大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和47(オ)75 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人鬼頭忠明の上告理由について。

原判決および記録によると、上告人は、差戻し後の原審において、本件約束手形

が既存債権の支払確保のために振り出されたものとしても、右債権はもともと無価

値であるから右手形の不渡りによつて直ちに手形金相当の損害を蒙つた旨の主張を

したのにかかわらず、原判決には右主張どおりの摘示がされていないといわなけれ

ばならない。

しかしながら、原判決の確定した事実によると、本件約束手形は、上告人のD急

送有限会社に対する既存の自動車売却代金債権の支払いについて振り出されたもの

であるところ、同会社は右手形振出し以前よりすでに経営が行き詰り、別に資産も

なく、右債権は、度重なる上告人の催告にもかかわらず支払われず、かつ、支払わ

れる見込みもなく、無価値であつたというのである。

右事実関係によると、右既存債権の支払いにつき、Dが本件約束手形を振り出し

それが不渡りになつたとしても、特段の事情のない限り、右手形の不渡りによつて

上告人が格別損害を蒙るものでないことが明らかである。

そうすると、差戻し後の原審において、上告人は、右特段の事情の存在について

主張・立証すべきところ、記録によると、上告人は、右特段の事情について何らの

主張・立証をしたことが認められないので、上告人の本訴請求は、棄却を免れない。

原判決が、上告人の前記主張を摘示せず、上告人において同人に損害が生じた事

実関係についてなんらの主張・立証をしないからその請求は失当である旨判示した

のは、その措辞に妥当を欠くものがあるが、右に述べたところと同趣旨であると解

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せられ、原審の右判断は、正当として首肯することができる。したがつて、原判決

に所論の違法はなく、論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 田 中 二 郎

裁判官 関 根 小 郷

裁判官 天 野 武 一

裁判官 坂 本 吉 勝

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