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最高裁判所第三小法廷 昭和55(あ)1491 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人竹内壽平、同天野武一、同伊達秋雄、同小山利男の上告趣意第一について

所得税法九条一項一一号イは、有価証券の譲渡による所得のうち非課税とされな

い所得として「継続して有価証券を売買することによる所得として政令で定めるも

の」と規定し、これを受けた所得税法施行令二六条は、一項において「法第九条第

一項第十一号イ(非課税所得)に規定する政令で定める所得は、有価証券の売買を

行なう者の最近における有価証券の売買の回数、数量又は金額、その売買について

の取引の種類及び資金の調達方法、その売買のための施設その他の状況に照らし、

営利を目的とした継続的行為と認められる取引から生じた所得とする。」と規定し、

二項において「前項の場合において、同項に規定する者のその年中における株式又

は出資の売買が次の各号に掲げる要件に該当するときは、その他の同項に規定する

取引に関する状況がどうであるかを問わず、その者の有価証券の売買による所得は、

同項の規定に該当する所得とする。一 その売買の回数が五十回以上であること。

二 その売買をした株数又は口数の合計が二十万以上であること。」と規定してい

る。前記所得税法の規定は、継続して有価証券を売買することによる所得が課税の

対象となることを法律自体において明示したうえで、その課税の対象となる所得の

範囲をさらに明確にすることを政令に委任したものであつて、このような法律の定

めが憲法上許されることは、当裁判所大法廷の判例(昭和二八年(オ)第六一六号

同三〇年三月二三日判決・民集九巻三号三三六頁、昭和二七年(あ)第四五三三号

同三三年七月九日判決・刑集一二巻一一号二四〇七頁)の趣旨に徴し明らかである。

それゆえ、前記所得税法の規定が憲法八四条に違反し、ひいては原判決が憲法三一

条に違反する旨をいう論旨は理由がない。また、右所得税法施行令二六条一項は、

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前記所得税法に規定する政令で定める所得とは、同項に示す実質的基準に照らし、

営利を目的とした継続的行為と認められる取引から生じた所得とすることを規定し

ているところ、同条二項は、一項を受けて、有価証券の売買を行う者の株式等の売

買の回数及び株数等の形式的基準により、その者の有価証券の売買による所得が一

項の所得にあたる場合を規定し、もつて、課税の対象となる有価証券の継続的取引

による所得の範囲を明確にしているものであつて、前記所得税法の委任の範囲を逸

脱しているものとは認められない。したがつて、所得税法施行令二六条二項の規定

の違憲をいう論旨は、前提を欠くものであつて、適法な上告理由にあたらない。

同第二、第三について

所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらな

い。

なお、所論は、所論株式の各取引は被告人の取引とは認められず、所論株式の配

当金も被告人に帰属するとは認められないにもかかわらず、右各取引の主体は被告

人個人であり、右配当金は被告人個人に帰属すると認定した原判決は、自由心証主

義を定めた刑訴法三一八条に違反し、事実を誤認したものである旨をるる主張する。

しかしながら、関係証拠によれば、原判決が、各取引ごとに事実経過を認定した上

で、A株式会社(以下、「会社」という。)株式五六万株、一〇〇万株、二九万株

の取引をはじめとする所論各取引は、被告人個人の取引であり、また、所論配当金

も被告人に帰属するとした判断は、これを肯認することができる。第一の争点とさ

れた会社株式五六万株の取引に関していうと、所論は、会社社長である被告人が、

常務会における差額補償の合意に基づき五六万株の操作をし、これによつて得られ

た会社の裏金により役員に対し差額補償をし、その残余の資金は会社の簿外資金と

して管理し、社長退任と同時に取締役会にこれを引き継いだと主張し、したがつて、

五六万株の取引は会社の取引であるという。しかしながら、関係証拠により肯認す

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ることができる原審の認定によると、差額補償の点については、被告人が会社の社

長として子会社株式放出による役員の損失を補償する旨を約していたとか、あるい

はまた、常務会自体が右差額補償を決定したという事実までは認められないという

のであり、簿外資金の管理、引継をいう点については、被告人は、いくらでも整理

報告をする機会があつたにもかかわらず、反対派役員からの社長退任勧告書を受取

るに及び、初めて、常務会において被告人のいう簿外資金の使途、保管状況につい

て説明し、その後、取締役会において一切を取締役会に移譲する旨の発言をし、一

応の了承を得たにとどまるというのであつて、しかも、右引継の点については、資

金の管理を移転するなど現実の引継行為がなされた形跡も、証拠上認められない。

してみれば、所論は、その前提を欠くものといわざるを得ない。その余の争点に関

する所論も、同様に、証拠上認め難い事実関係を前提に立論しているなどいずれも

にわかに採用し難く、結局、原判決に所論のような事実誤認及びこれに伴う訴訟手

続の法令違反があるとは認められない。

そのほか、所論にかんがみ、記録を調査してみても、刑訴法四一一条を適用すべ

きものとは認められない。

よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

昭和五九年三月一六日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 木 戸 口 久 治

裁判官 横 井 大 三

裁判官 伊 藤 正 己

裁判官 安 岡 滿 彦

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